私がゲイを公表して働く理由。セールスフォース社員「もう同じ思いはしてほしくない」
大学時代にはアウティングも経験
相場さんが初めて職場でカミングアウトしたのは、前職時代の2012年のこと。当時勤務していた日本IBMが、同性カップルに対しても結婚した夫婦と同様に結婚祝い金を支給する制度を設けたことがきっかけだった。 この社内制度への申請をきっかけに「これからは会社でもオープンに生きていこう」と決めた。 相場さんは当時のパートナーと都内で結婚式を挙げ、結婚式では家族や友人はもちろん会社の上司や同僚も祝福してくれたという。 ただ同性カップルの結婚式の実現は、簡単ではなかったという。 今でこそ結婚情報誌大手「ゼクシィ」が同性パートナーを広告に起用したり、「マイナビウエディング」がLGBTQ+フレンドリーな式場を紹介したりしているが、相場さんが挙式した2013年の当時はまだ理解は進んでいなかった。 相場さんは挙式を希望していた式場から「前例がない。牧師を呼ぶこともあり、男性同士の式は挙げられない」などと断られたという。 「後に続くひとたちには同じ経験をしてほしくない」──。 相場さんは次第にその思いを強くしていった。 「結婚式場での経験だけでなく、大学4年のときには大学の後輩にアウティングされた経験もあってすごく思い詰めたこともありました。そんな思いは、もう誰にもしてほしくない。 私もクローゼットな時期もあって、その時は声を上げているアクティビストの方たちに尊敬の念や感謝の気持ちがありました。今度は自分の言葉で説明していこうと思いました」
同性婚訴訟の原告団にも参加
相場さんは2019年2月、日本初の同性婚訴訟の原告団の一員として裁判にも参加した。相場さんら13組のカップルは、同性婚を認めない民法などの規定は憲法に違反すると訴え、東京、大阪、名古屋、札幌の4地裁に一斉提訴した。 相場さんは2019年6月には原告団からは脱退しているが、同性婚訴訟はいまも控訴審が続いている(札幌高裁の原告は最高裁に上告)。 全国初の同性婚訴訟の原告として注目された相場さんは、当時多くのメディアの取材を受けた。そんな相場さんに対しては、異性愛者からもLGBTQ+の当事者たちからも、賛否両論の声が届いた。 「応援してくれるひともたくさんいましたが、『伝統的な家族観が失われる』『同性婚は少子化を助長する』という批判もありました。 また当事者の方でも全員が婚姻の平等を求めているわけではありません。私自身『すべての当事者を代弁しているわけではない』という姿勢を保ちながら発言しているつもりでしたが批判されることもありました」 それでも相場さんは「反対するひとにもそれぞれの考えがあるのは当然」と話す。 「反対の考えを持つ場合に、どういう風に伝えたら分かってくれるのか、理解を広がられるのかを考えて、迷いながら進んできたというのが率直な思いです」 ときにはSNSなどの匿名コメントとして、同性愛嫌悪をむき出しにした辛辣な声を向けられることもあった。 「誹謗中傷は見ないようにしていますし、忘れるようにしています」