レモンで優美なレース模様を表現した京銘菓【今日の逸品】
〈大極殿本舗〉レースかん
カーサ ブルータスの人気企画「10選」シリーズから、こだわりの逸品をジャンルレスに日替わりでご紹介します。 【フォトギャラリーを見る】 京の台所、錦市場にほど近い高倉通りに本店を構える〈大極殿本舗〉。1885年に創業し、明治期に長崎で製造技術を学んだ2代目が京都でいち早くカステラを販売したことで知られ、今も特製の窯で焼き上げる「春庭良(カステイラ)」は代表銘菓の一つ。そんな老舗で夏の訪れとともに登場するのが「レースかん」。輪切りにしたレモンをレースの模様に見立て、寒天で固めた何とも優美で涼やかな錦玉羹。暑気払いの贈り物として京都の人々に長く愛される名物で、隙間なくレモンのスライスを敷き詰めた姿は神々しい美しさ…! 一般市民にはまだまだレモンが珍しかった昭和初期に3代目が考案したというのだから、その先見の明と美的センスに驚かされる。当時はさぞやハイカラなお菓子だったに違いない。固めに仕上げた寒天はコリコリと弾力のある歯ざわりで、噛めばレモンの香りと皮の苦味が豊かに立ちのぼる。半世紀を超えて愛され続ける、色褪せぬ夏の名品だ。
photo_Junichi Kusaka text_Yoko Fujimori