2024年ノーベル経済学賞を受賞した奇才、ダロン・アセモグル教授が語る「日本経済の根深い問題」
年齢よりも知識が大事
―社会制度が発展に重要な影響を及ぼすことをあなたは繰り返し主張していますが、この先、日本の硬直化した社会と経済を、どう成長させていけばよいでしょうか? 日本は自動車やエレクトロニクス産業などの製造業では非常に成功しましたが、より高い生産性が求められるサービス業ではあまり成功していません。サービス業にこそもっと激しい競争と改革が必要だと考えます。 ―日本の企業は年功序列が根強く、実力主義になかなか移行しないことが真の成長を阻んでいると言う人がいます。企業が繁栄するためには、旧態依然の制度を排除するべきだと思いますか? そうですね。特に大企業では、より実力主義的な昇進が行われるべきだと心から思います。 組織構造を変え、社内全体で実力主義が浸透するように意識改革をする必要があります。年齢よりも知識。ヒエラルキーではなく、イニシアティブです。 この変化が欠けている企業構造こそが、日本経済の根深い問題だと考えています。変化を怖がらないことが、日本企業に何よりも不可欠なことでしょう。 加えて、日本は健康的で生産性が高い高齢者を、もっとうまく活用する方法を考えていかなくてはなりません。 ダロン・アセモグル '67年、トルコ・イスタンブール生まれ。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで数理経済学と計量経済学の博士号を取得。マサチューセッツ工科大学教授。共著に、『国家はなぜ衰退するのか』『自由の命運』『技術革新と不平等の1000年史』(いずれも早川書房)がある 後編記事『2024年ノーベル経済学賞受賞!ダロン・アセモグル教授が語る「日本はもっと移民を受け入れて大丈夫」。そのシンプルな理由』に続く。 「週刊現代」2024年11月16日・23日合併号より
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