岡田太郎社長『スターダムの現状と未来』電撃就任から選手離脱を振り返り「逆風の中でも信頼関係の構築に尽力」
岡田太郎社長が語るスターダムの現状と未来
女子プロレス団体スターダムの岡田太郎社長が就任以来の振り返りを行い、逆風の中での選手との信頼関係の構築や改善点を語った。選手の離脱が続いた厳しい状況に直面しながらも、岡田社長は自らの信頼を基に選手たちと向き合い、真摯なコミュニケーションを重視したと述べた。 【動画】岩谷麻優 激白!「私も行くつもりだった…」あの“スターダム大量離脱”を語る 今後は、デジタルプラットフォームの強化や新戦力の加入を進め、東京ドームでの単独興行開催を目指す姿勢を示している。社長の誠実な取り組みが、スターダムの未来を切り拓く鍵となることが期待されている。 今回はインタビュー前編となる。 ①就任からの振返り ――就任から選手の離脱があったりしましたが、今振り返ってどのような感じですか? 一言で言うと、やはり本当に逆風が吹いていたので、就任当初にこの時期にはここまで進んでいるなという想定より進みは遅かったなというのを実感していますね。 ――木谷オーナーからの信頼も非常に厚く、岡田社長だから任せたという期待も結構大きかったと思います。 そのように見ていただけると嬉しいです。過去11~12年くらい業務をしていくなかで、会社でやったことないこと、全社的な規模の大きいライブなどを任せていただいたことがあるので、何とかなるだろう、何とかこれ以上悪くならないだろうと思って配置されたのかなというのは非常に感じています。こいつを入れたら何とかなるだろうと思って、人事采配を振るっていただいたと思います。恐らく木谷社長も思っている以上に、逆風が強かったというのは同じ考えだと思います。 ――岡田社長は年齢的にも選手たちに近しいので、選手たちの気持ちを組み上げやすい部分もあったのではと思いました。 最初の逆風は、会社・体制に物を言えないところでのトラブルが元になっていました。ブシロードでの業務はアニメ声優コンテンツなど女性が主軸タレントのコンテンツが多く、その女性タレントと接する経験が多い方だったので、そういったところで気持ちを汲みながらやっていこうとしました。そこは納得して就任できましたが、逆風はそれだけじゃなかったというのが一番です。最初は選手たちの言うことを聞いて、会社を整理して進めばうまくいくと思っていました。何とかなるだろうという気持ちは僕にも木谷オーナーにもあったと思います。入ってみると逆風だけじゃなく、船底に穴が開くというか、中心人物の(ロッシー)小川さんの離脱および独立に伴い、選手たちも離脱を考えていたと判明しました。就任してから判明した出来事だったので、これはと… ――当初は胃が痛い日々を過ごされていたと思いますが、岡田社長が選手との信頼関係の築き方で大事にしていたポイントはどんなところでしょうか? まず話を聞くことはもちろんですが、私が選手を信頼していることが一番大事だと思っています。相手からの信頼は自分ではどうしようもないですが、自分が相手を信頼することはできるなと思いました。自分が相手を信頼して、自分の考えていることや、こうした方がいいのではないかと思うことはできる限り正直に伝えます。プロレスはナマモノです。試合結果やお客さんの反応で判断は変わります。そのときは正直に話して、この方向に一緒に行かないかと伝えます。こちらが胸の内を隠して、実際は違うのに逆のことを言って奮起させる管理方法もよくあるじゃないですか。そのようなことはせず、素直に伝えて違ったときに謝り、新しい提案をすることを繰り返してきました。 ――離脱劇があったにも関わらず、よくそこで持ちこたえたなという印象は持っていました。 代表が謝罪することに関して、選手たちは新鮮だったと思います。あまり業界を一括りにするのはよくないですが、この業界は命や体を張っるという世界ですので、謝ったら負け、弱音を見せたら負けとかという状況がずっと伝統的にあったと思っています。なので、代表権がある、権力があるように見える人間が謝ったり、頭を下げて低姿勢に行ったりすることはあまりなかったと入って感じていました。そういう意味では新鮮で、少し楽にやってみようかなと思ってもらえたのかなと思いました。 それだけ真剣に会社のことを考えているかが伝わったのではないかと感じております。もちろん離脱した選手に伝わらなかったわけではなくて、離脱した選手にも考えがあってそちらを選んだと思いますし、残った選手にもスターダムを離れようとする気持ちもあったかもしれない。そういった気持も理解して、選手本人が冷静に判断できるようにできる限り話を聞き、方針を説明しました。最後は一緒にやりましょう、お願いしますと。選手にとって、この対話の時間がが一番大きかったなと思います。 ――今の話を聞いていても振り返ってもですが、やはり岡田社長が真摯に向き合って、逃げずにしっかりと話を伝えてきたことが、今のブシロードのスターダムに対する誠実さが伝わったような気がしました。 私たち(ブシロードグループ)はさまざまなコンテンツを扱っているので、アニメでしたら監督や現場の人、声優さん、カードゲームでしたらイラストを描く人や中身を作る人など、さまざまなクリエイターと接している経験があります。プロレスラーもアスリートでありながら、クリエイターでもあると思います。クリエイターにできる限り良い状態で仕事をしていただけるように、サポートして、時にリードするというのがブシロードの強みだと思っています。そのような会社の姿勢が伝わったと思います。 ――ちなみに、一番時間かけた選手って誰ですか。 岩谷選手です。スターダムの選手たちのなかでも大きかったと思います。本人も永田選手のYouTubeチャンネルで言っていますので(笑)。もちろん、時間をかけたから良い悪い、誰が1番2番ではないですから。昔のスターダムは来る者拒まず去る者追わずでしたよね。選手の自己責任なんです。選手の判断に任せるのは、良く言えば自主性を重んじているといえます。一方で私たちは団体ですので、選手を守る必要があります。もし選手が出ていくと考えることがあれば、残った場合のメリットとデメリット、出た場合のメリットとデメリットを、私はこう考えているので、ぜひ残ってほしいと声をかけます。これは去る者を追っていると見られるかもしれませんが、所属団体にある責任だと意識しています。 ――それは悩んでいる選手や、先が見えなくなっている選手に、冷静になれるポイントにはなりますね。これまでの部分を踏まえて、ご自身でこれは改善できたと思うところはありますでしょうか。 まだ表に出ているのは本当に少ないかもしれませんが、一番は会社および社員のお客様に対する態度です。人間がやっていることなのでミスが起こります。しかし、それに対して誠実に謝罪をしたりとか、状況説明をしたりとか、もちろん開示できるものできないものがありますが、開示できる情報、お客様を不安にさせないようにする情報はできる限り開示できるようになります。その上で、次にそのミスを乗り越えてどの選択していくかというのが一番大きいなと思っています。それがチケットの払い戻しや選手の欠場、動画配信の不備などの対応になります。現状をきちんとお伝えして謝罪して、次の対応策を説明するというのが、今までより丁寧になりました。それが一番大きい改善だと思います。 ――それは確かに感じます。公式Xを見ていてもそうですし、従来だったらお客様が不安がっていたところに、素早く手を入れている印象は受けていました。 今、説明責任という言葉を一般のお客様やユーザーが軽率に使える時代ですので、そこをしっかりとコントロールしなければいけないです。不備があった場合は、申し訳ないということと、今こうなっているという現状は伝えなければいけません。しかし、試合のことや選手の感情、考え方を全部公式から解説を入れたりする必要はありません。伝えるべきこととそうでないことをしっかり分けなければいけません。何でも言うこと聞くようにはなってはいけないので、次はそこに注意してお客様と向き合っていきたいです。 ――そのような深い考えが選手を守ることにも繋がると思うので、素晴らしいと思います。