自閉症で有給の仕事に就く人は「3分の1未満」。ADHDや失読症など"さまざまな人"が働ける、進歩的な職場と働き方とは
ここ数年、働き方について具体的な見直しが行われ、その改革が成功を収めたケースが度々注目されてきた。どこで、どのように、誰と仕事するのか。この3つの項目を重要視することが、職場と働く人々のモチベーションに直結し、労働力を最大限に活かせる確実な方法だと考えられている。しかし、自閉症、ADHDといった比較的身近な悩みを抱えた人々の場合はどうなのだろう? 【写真】名俳優トム・クルーズも...文字の読み書き学習に困難を抱える「読字障害」と闘ってきたセレブたち 世界の人口の約15~20%は、ニューロダイバージェント(さまざまなタイプの脳を持っている人:自閉症、ADHD、難読症、総合運動障害などの人々が値する)で、5人に1人が自閉症やADHD、失読症やその数字バージョンである算数障がい(筆者もその一人)と診断されている。ビジネスの現場が無意識にこうした人々を阻害すると、チームが最高のパフォーマンを発揮する多面性を欠くことになる。 「自分と異なる考え方をする人を雇うよう尽力すると、結果的には大きな成功が得られると私は信じています。異なる見方や経験を職場にもたらしてくれる人を探すべきです」と、認知科学者で『The Neurodiversity Edge』の著者モーリーン・ダン博士は言う。しかし、自閉症で有給の仕事に就いている人は、まだ3分の1未満しかいない。 ダン博士は、こうした求人ギャップに取り組む第一歩は、“文化的適合”(企業文化や風土にマッチしているかどうか)というコンセプトを忘れ、職務説明で使われている言語や、従来の選考過程を改めることが重要だと確信している。 「彼らに予め質問を見せたり、作品集を持ってきてもらったり、試用期間を設けたりすべきです。そうすれば、困難な販売員の仕事を無理強いされるのではなく、彼らは自分ができることを事前に見せることが出来ます」とアドバイスする。 ニューロダイバーシティ(脳多様性)のある職場のメリットを最大限に生かすには、何事もまず教育が大事だ。「企業は自閉症の現実について十分な知識がない場合が多く、真正面からぶつかってなんとかしようとします」と、英全国自閉症協会(National Autistic Society)のクリスティン・フリントフト=スミスは述べる。彼女は脳多様性の訓練を受けることを会社の最良の実践モデルに定めるべきだと確信しており、企業がそれを評価する枠組みを提供している。 また、職場スペース自体の環境が適していないケースも多い。 「実は、棒状の蛍光灯ライトは、自閉症の人をはじめ多くの人の心を乱す可能性があります。周りの雑音も然りです」と、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのエリザベス・ハーバート心理学&人間開発准教授は説明し、「職場でノイズキャンセリングヘッドホンをつけるだけでも、正しい方向性への第一歩といえるでしょう」とアドバイス。 オープンデザインやフリーデスク(同じデスクを異なる時間帯に異なる人が使う)を採用する企業も多いが、それも自分だけの囲まれたスペースを好む人や、自分のデスクで落ち着いたルーティンだけをしている人にとってはストレスが多くなる。 「ニューロダイバージェントな人の多くは、クライアントとの微妙な会話や、職場での軽い冗談、何気ないやり取りが、時に困難である可能性が高い」と、フリントフト・スミス。書いてコミュニケーションするほうがラクな人たちにとって、ビデオ通話の横にあるチャット機能は素晴らしいもので、ダイアリーを送るよりミーティングの内容をきちんと説明でき、不安も解消できる。また、その日の懸案事項に対処する信頼できるフィードバック&サポート装置として機能するよう、職場にメンターシステムを導入することも勧める。 もちろん、現時点ではまだ、自分の症状を雇用者に明かすことを恐れている人が依然として多い。しかし、私たちが包含性ある職場を基本モデルとして作り上げる努力をすれば、彼らがあえて要求しなくても彼らのニーズに見合うようになるかもしれないと、フリントフト・スミスは考える。 進化した職場だと認められる最も重要な側面は、一つの方法をすべての人に当てはめようとするのではなく、各従業員を個人として扱うことだ。「それが、ニューロダーバージェントだけでなく、従業員全員の可能性を最大限に生かす良い職場のやり方です」とハーバートは述べている。
From Harper's BAZAAR.com