逆転負けで4連敗の阪神と1年ぶり貯金「1」中日の明暗を分けた”意識の徹底”の差…1番抜擢の島田は4打席わずか9球で凡退
阪神が12日、バンテリンドームで行われた今季初の中日戦に1-2で逆転負けし、引き分けを挟んで4連敗。開幕15試合終了時点での借金「12」は2リーグ分立後のプロ野球ワースト記録となった。先発の西勇輝(31)は7回無失点と踏ん張ったが、新勝利の方程式に指名した2番手の湯浅京己(22)が8回に集中打を浴び逆転を許した。打線を大きく組み替えたが効果はなく、3試合続けて1得点以下。一方の中日は昨年4月以来1年ぶりの貯金「1」となった。両チームの明暗を分けたのは、首脳陣がチームに浸透させている“意識の差”だった。
新勝利の方程式が空転
新勝利の方程式が空転した。 8回、矢野監督は、すでに108球を投げていた西の交代を告げて湯浅をクリーンナップから始まる回のマウンドに送った。先頭の鵜飼はフォークで三振に仕留めたが、続くビシエドにはフォークが落ちなかった。思い切り引っ張られてレフトフェンスにワンバウンドで当たる二塁打。そして阿部にまたフォークを狙われてセンター前へ運ばれた。走者は代走ではなくビシエドだったが、中日の三塁コーチは近本の肩の弱さを見越して迷わず本塁へ突入させた。 隠れたファインプレーである。 このフォークも本来の落差はなかった。湯浅は力んでいた。ストレートを3球続けてからの次のボール。フォークを狙われていた。 阿部は7試合連続打点。 「チャンスで打てている、打てていないでは、心境が違う。センター中心に打てば、チャンスが広がる。あれを教訓にチーム全体でやっていきたい」と、試合後、立浪監督が同点打を解説したが、ここに竜の指揮官が徹底してきた野球の神髄がある。 ストライクを打ち、ボールを見送るという基本中の基本。フルスイングが持ち味だった中村打撃コーチの教えなのだろうが、低めのボールへの見極めと狙い球が徹底されていたのである。 さらに暴投と四球で一死一、三塁とピンチを広げてしまったところで、湯浅は、続く石川を追い込みながら、またフォークを狙い打たれた。ダイビングしたショート中野のグラブの遥か先をライナー性で抜けていく勝ち越しのタイムリー。このフォークも落差がなかった。緊張とプレッシャーが、経験の少ない湯浅から本来の実力を奪いとってしまっていたのである。 この継投には賛否はあるだろう。連敗脱出の重圧に加えて1点差。湯浅の経験の浅さを考えれば持っている能力を発揮できない可能性があった。西の“へばり”との兼ね合いだが、8回のクリーンナップは、ベテランの投球術に任せ、9回を岩崎で逃げ切る継投策がベストでなかったか。 結果的に矢野監督は、西がピンチを招いての途中交代より回の頭から湯浅を起用する選択をした。ここから先のことを考えれば、湯浅に緊迫の場面を経験させ、成長の糧にしてもらうという選択肢は当然“あり”だ。だが、今は、この連敗の泥沼から一刻も早く抜け出さねばならない。先のことを考えるよりも目先の勝利を最善策でひとつひとつつかんでいかねばならない状況ではなかったか。