逆転負けで4連敗の阪神と1年ぶり貯金「1」中日の明暗を分けた”意識の徹底”の差…1番抜擢の島田は4打席わずか9球で凡退
一方のヒーローとなった石川は、「(狙い球の)ゾーンを上げていた」と、このシーンを振り返り、立浪監督は、「初球から(打ちに)いったのがいい結果につながった。変化球がよくひっかかった。まだまだ粗さはあるが、こういうのを自信にしていってほしい」と3年目のホープを称賛した。石川は初球のストレート、2球目のフォークと続けて打ちにいった。そしてカウント1-2からチームに徹底されているボールの見極めを守ったのである。 対して阪神はどうか。 矢野監督は、大胆に打線を組み替えた。大山・一塁、佐藤・三塁で外野を空け、島田、山本を1、2番に置き、好調の近本を3番、ルーキーの豊田を7番で起用した。だが、初スタメンで起用された3人は1本のヒットも打てなかった。エース大野のピッチング技術もさることながらボールの見極めが不十分で、特に1番の島田は4打席立ちわずか9球で終わっている。1番の役割とは何なのか。関西のスポーツ紙によると矢野監督は、「スタメンで出てないヤツもいたので、出たいと思っている選手を使い、どうなるのかを見たかった」と、彼らの抜擢理由を説明したという。 出たい意欲のない選手などプロ野球界にいない。重要なのは、そこではなく打線の中で、どんな役割を期待し、何を徹底させるかだろう。それが起用する側の責任というものなのだ。 中日の1番の大島は、4打席で17球、2番の岡林も4打席で15球を西に投げさせた。中日も得点圏で拙攻を繰り返し、佐藤が6回に先に一発をお見舞いして均衡を破るまで、互いに0行進が続いたが、ジワジワと、ボディブローを放ち続け、西に108球の球数を投げさせた。あと10球少なければ矢野監督も西を続投させていただろう。勝負の妙である。 中日は、新外国人の補強もできず、若手を我慢して起用して種を蒔かねばならないチーム状況の中で、立浪監督が「今やれる野球」を徹底している。石川、鵜飼は、打率.200、京田にいたっては打率.150である。だが、ベンチの指示と教育が徹底しているため、それを集中打に変えることができている。逆転勝ちが早くも5試合。チーム得点はリーグ4位の49点だが、そのうち17点を8回で奪うなどの粘りがある。キャンプ、オープン戦を通じて、首脳陣がチームに何を植え付けようとしてきたのか。中日と阪神の意識の徹底の違いが、勝敗を分けたと言っては言い過ぎだろうか。 今日13日の中日の先発は右腕の勝野。矢野監督は、また打線を組み替えて臨むと考えられるが、重要なのは、カタチではなく、どんな役割を与えて何を求めるか。戦術、戦略、そして意識の徹底である。 (文責・論スポ、スポーツタイムズ通信社)