「悪口を言われても気にしない人」「すぐ落ち込む人」 メンタルの差はどう生まれるのか?
他人から言われたことに深く傷ついてしまうのは、言葉そのものよりも、自分が抱く自己評価が大きく影響しているかもしれません。ネガティブな自己イメージを克服し、自信に満ちた自分になるためのヒントとは? 脳科学者の中野信子さんの書籍『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』より紹介します。 人間関係が良くなる8か条 ※本稿は、中野信子著『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(アスコム)の一部を再編集したものです。
他人の評価より自分の評価のほうに強く影響を受ける
人間というのは、誰か他人が評価するよりもずっと、自分で自分のことを常に評価し続けています。そのような機能が、脳(前頭葉・内側前頭前野)にあることが知られているくらいです。なので、他人の言葉よりも、自分の思い込みのほうが、コンプレックスを強くしているのです。 例えば、太っていることを気にしている人に向かって「デブ!」と言うと、その人は傷ついてしまいます。太っていることを気にしていれば気にしているほど、その人は、深く傷ついてしまうでしょう。 客観的に見て特に太っている体型ではない人でも、普段から自分が太っていると思い込んでいる人だったら、「痩せなきゃ......」という思いに駆られてしまうことも多いのです。ダイエットに必死な人だったりしたら、悲しすぎてどん底まで落ち込んでしまうかもしれません。 しかし、もしその人が、体型についてまったくコンプレックスを持っていなかったとしたら、どうでしょうか。むしろ、自分が太っていることを気に入っていて、それをウリにしているとしたら。 その人は、いきなり「デブ!」と言われたことで、ちょっとびっくりするかもしれませんが、それによって心が傷つくことはないでしょう。むしろ逆に、「なあに? いきなり(笑)」と、笑い出してしまうくらいの心の余裕があるかもしれません。
人間は自己イメージに該当するものしか受け入れない
この例が示しているように、心が傷ついてしまうときには、誰かの言葉そのものが、その人の心を傷つけるのではないのです。自分自身が持っているネガティブな自己評価を、誰かの言葉が後押しし、その言葉に同意をしてしまったときに、人は傷つくのです。つまり、その言葉を肯定することで、自分で自分を傷つけてしまいます。 ですが、人間は無意識に「誰かが何かを言ったとしても、自分自身が持っている『自己イメージ』に合致することにしか同意しない」という性質を持ってもいます。 その性質をうまく利用すれば、自分自身に対するネガティブな自己評価をなくしていくことで、誰かが何かを言ったとしても、ちょっとやそっとのことでは傷つかない器の大きい自分になれる、ということになります。 そこで私は、自分の長所を常に意識するようにし、短所にはいったん目をつぶるようにしました。 すると、短所を指摘されたとしても冷静に処理することができるのです。その指摘が、自分にプラスになりそうな内容だったら、感情に左右されないようにしながら取り入れることも必要かもしれません。自分一人ではなかなか気づくことができない自分を改善できるポイントに、気づかせてもらう絶好のチャンスだと思いながら、なるべく前向きな気持ちを保つようにしましょう。 言われると傷つきそうなことには、鈍感になったり忘れたりするように心がけます。そして、長所を指摘された場合には、素直に喜びます。 しかし「自分自身に対するネガティブな評価をなくそう」というのは、口で言うのは簡単ですが、実際にやってみるのは難しいもの。自分自身のイメージは、長い年月で形づくられてきたものなので、簡単にはひっくり返すことができません。 一説によれば、人間は成人するまでの間に、14万8千回もの、否定的な言葉を聞かされて育ってくるのだそうです。計算してみると、一日平均20回、自分自身に対する否定を聞かされていることになるのですが、そんなにメチャクチャな数字ではなさそうです。 それにしても、こんなにも多くの回数、否定的な見方に慣らされてきたら、よほど意識していない限り、ちょっと気を抜けばすぐに、自己否定の考え方に染まってしまいそうですよね。 こうした否定的な自己イメージはいったんできあがってしまうと、それ自体がもう変えようのない実体を持って認知されてしまいます。