都市に共存する生き物の視点を取り入れた真の創造力とは? 社会に問題提起し続ける「チンポム」のエリイさんと林靖高さんが昆虫研究者・牧田習さんと語る“生態系、街、アートの行方”「渋谷半世紀」~若者の聖地の今~
▽命を超えたスパン エリイ「牧田さんの『人間本位』ではない考え方は今や世界の共通認識だ。あらゆる生き物の視点を取り入れることで真の創造力が問われる」 牧田「どんな動物も単一で生きることは無理。編み目の中で存在している。毛虫やイモムシを減らしてチョウだけを増やそうというのは無理な話。ゴキブリでもどんな虫でも、人間が思っているよりずっとキャパがある。人間も生態系の一部なので、虫がいなければ人間も生存できない」 × × × エリイさんが「牧田さんは(研究の観点から)どれぐらいのスパンで物事を捉えているのか?」と問うと、牧田さんは「地球の歴史はすごく長いので、短くても10~30年、長くて何百年単位で考えて見えてくるものがある。その1年間だけの変化で見るのはなかなか難しい」と答えた。 「大きいスパンで考えているのは、自分たちの作品の制作活動と似ているかもしれない」と林さん。エリイさんも「自分たちの命を超えたスパンで物事を捉えて、制作をする時は現時点のみでない視点を取り入れた作品にする。時間の経過や起きた事によって作品の見え方が変わっていく」と話し、「500年後の人がチンポムの作品を見たら、『あのころの東京の人はなにを考えていたのかな』ということが見えてくるのかなと思う」。
今後の活動について、林さんは「昨年テーマにした『奈落』を掘り下げていくというのはあるかもしれない」と、エリイさんは「一つの展覧会や作品づくりはゴールではない。流れゆく命のうちの一つであり、全ては流動的だ」と話す。生態系や命の存在を実感し、都市や地域、人間やあらゆる生物、アートが持つ本来の可能性を見つけたい。