都市に共存する生き物の視点を取り入れた真の創造力とは? 社会に問題提起し続ける「チンポム」のエリイさんと林靖高さんが昆虫研究者・牧田習さんと語る“生態系、街、アートの行方”「渋谷半世紀」~若者の聖地の今~
再開発が続く渋谷は昔から演劇の街として知られる。そこにもまだ「奈落」は存在するのか? 林さんは「めちゃめちゃ変わりつつある街だけれど、今は一番つまらない状態になってきていると思う。でもまっさらになった所に奈落的な文化が生まれるのかどうかは見ていきたい。(再開発を経て)渋谷で新しい何かが始まることもあると思うし、期待したいところもある」と語る。 ▽カタツムリと排除の問題 いま飼っているカタツムリが、最近のエリイさんの関心事だという。「生態を通して都市や人間を考察することに興味がある。カラスと同様、カタツムリも近頃は街であまり見かけなくなった。去年、カタツムリの家を掃除していて石を持ち上げたら白い卵がたくさん見つかった。その卵がかえって今も育て続けている。命の強さを目の当たりにした」 林さんも「自分はカタツムリを強く意識していないけれど、カラスもカタツムリを食べるだろうし、自分たちの作品の中に薄くても存在しているはず」と話す。
「渋谷がつまらないと言ったのは、排除された人やもの、用がなくなり居心地が悪くなった人が新宿に比べて多くなったから。宮下公園に新しいビルが建ち、段ボールハウスの中に住んでいた人たちが追い出されてしまったのもその現象の一つ」と続け、「そういう意味で、カタツムリがいなさ過ぎる街はなにかが偏っている。生態系の中にカタツムリがいないなんて良い街ではない。ホームレスの人たちも生態系の中に存在するのが良い都市なのだと思う。(行政支援を受けた人もいるだろうが)路上生活者たちは散り散りになった。それは不自然な状態だ」 牧田さんが生物界での排除について説明した。「カタツムリは乾燥している所では生息しにくい。東京は特に乾燥化が進んでいるが、湿度は生物が生息するために必要な要素。そんなふうに(乾燥などが原因で)排除される昆虫や生物が出てくると、周りの環境に対する影響は大きい」「東京の中で一カ所『皇居だけ』みたいに自然があふれているというのも、ロングスパンで見たとき実は理想的な状況ではない。なるべく広い範囲でいろんな生物がいる方が生態系自体も持続しやすく、生物多様性も保たれる」