ウミウシに擬態する新種のゴカイを発見 名大など
ウミウシは軟体動物で、イカやタコ、貝が代表例。一方、ゴカイは環形動物に属し、ミミズやヒルなどと同じ種類だが、足から毛が生えており、多毛類といわれる。今回見つかったウミウシのような生き物は、今まで知られているゴカイと異なる特徴をもつことから、自見講師らは新種のゴカイと判断した。そして、化粧のようにきれいなことと、姿を変える「化生」から、ケショウシリスと名付けた。シリスはシリス科のゴカイの総称だ。
自見講師らはこのケショウシリスがどのような擬態であるのかを確かめることにした。毒を持つ生物への擬態には、ベイツ型擬態とミュラー型擬態の2種類がある。ベイツ型は自身には毒がないのに毒があるように見せかけて擬態する。一方、ミュラー型は毒がある生き物同士が似た模様に進化する擬態を示す。これらの擬態は環形動物では珍しいとされる。
ミノウミウシの毒があるミノと呼ばれる部分に良く似た「背触手」を調べた結果、毒はなかった。ただ、ケショウシリスは標本にできたものが2個体しかなく、毒がないと断定することはできないという。
自見講師は「今後、より多くの個体が見つかれば毒の有無を正確に把握できる。(ベイツ型・ミュラー型)どちらによって擬態に成功したのか、また、なぜ毒を持つミノウミウシと擬態するに至ったのか、進化の過程について研究を進め、ケショウシリスがどのような生態なのか、解明していきたい」としている。
研究は昭和聖徳記念財団、日本学術振興会の科学研究費助成事業の助成を受けて行われた。成果は7月29日の英科学誌「サイエンティフィック リポーツ」に掲載され、同25日に名古屋大学が発表した。