家賃2万5,000円の市営団地に「20年引きこもる」氷河期世代の50歳長男、ともに暮らしてきた年金月17万円・87歳母逝去で窮地「どう生きていけばいいのか」
引きこもりの生活を支えていた「月17万円」の母の年金
症状は一進一退を繰り返し、なかなか改善が見られないまま20年の歳月が過ぎてしまった吉田さん。その間、生活を支えたのは一緒に暮らす母・光枝さん(仮名・87歳)が受け取っている月17万円の年金。住まいは市内の団地で家賃2万5,000円。親子ふたりで暮らすには問題のないお金だったといいます。 ちなみに親子が住む町の生活保護費(40代と75歳以上2人暮らし)は、最低生活費となる生活扶助基準額が11万7,940円、家賃分となる住宅扶助基準額は6万2,000円、合計17万9,940円。しかし、実際の家賃のほうが低い場合は、実際の家賃の額が支給されます。つまり吉田さん世帯の世帯収入が14万2,940円を下回っていれば、生活保護を受け取れる可能性がありました。 長期化する大輔さんの引きこもり。それとともに母・光枝さんの心配は大きくなっていったといいます。 ――私もいつまでも元気でいられるわけではない ――大輔をひとり置いていけない 光枝さんの口癖。厚生労働省等の調査によると、年齢別の要支援・要介護の割合は70代前半で5.8%、70代後半で11.8%、80代前半で26.0%。80代後半では59.5%と、半数以上が支援・介護が必要となります。光枝さんも80代後半となり、身体も不自由になっている様子。周囲から「病院に行ったら?」といわれても、頑として病院に行くことはなかったといいます。「病気だとわかったら、大輔によくないから」というのが、光枝さんの言い分でした。 しかし光枝さんの我慢は、ある日、終わりを迎えます。倒れて病院に運ばれた際に、がんにおかされていることが判明。しかも末期で手の施しようがないほど進行していて、1ヵ月持つか持たないか、という状態だったのです。結局、病院に運ばれて2週間ほどで、光枝さんは息を引き取ったといいます。 ――これから、どう、生きていけばいいのか 急にひとり取り残された大輔さん、周囲のサポートもあり、その後生活保護を申請。生活扶助として月7.8万円ほどを受け取っています。また市営団地にも引き続き、住み続けることができて、ひと安心だといいます。 しかし、引きこもりの生活を支えてくれた母親はもういません。ただ少しずつ変化もあるとか。今はやりのスポットワーク。これであれば、組織に属することなく、自分のできる範囲で仕事ができるかもしれない……わずかではありますが、社会復帰に向けて動き出しているといいます。 [参考資料] 内閣府『こども・若者の意識と生活に関する調査 (令和4年度)』 厚生労働省『介護給付費等実態統計月報』 総務省『人口推計月報』
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