「ナゾの物質」ダークマターの正体がついに明らかに…?「最有力候補」を科学的検証とともに一挙解説!
「光の親戚」アクシオン
次の候補はアクシオンという、これまた光の親戚のような新粒子です。 もともとは、前述されたグルーオンとクォークの間の強い相互作用において、実験データと合うようにCP対称性の保存則を保つべし、という理論的要求から、その存在が予言された粒子です。アクシオンがなければ、CP非保存となってしまい、実験と矛盾します。アクシオンは強い磁石がつくる磁場の下で光子に変身するという性質をもちます。この性質を用いて、地球の周りに大量に存在しているアクシオンや、太陽の中の散乱で新しくつくられて地球に向かって飛んできているアクシオンが、磁場の下で光子に変換される様子を観測しています。アクシオンは、典型的に約1eVの質量をもつと期待されています。はmicro(マイクロ)で100万分の1を表します。しかし、依然として未発見で、現在の検出器の感度では足りないのではないかと解釈されています。 もしくは、前述の強い相互作用におけるCP非保存と無関係なアクシオンに似た粒子、アクシオン・ライク・パーティクル(ALP)がダークマターになっている可能性すら、活発に検討され始めています。ALPの場合は、これまでの実験では見つからないため、新しい地上もしくは宇宙での実験が数々提案されてきています。KEKのBelle II 実験では、電子と陽電子を衝突させて、数十GeVの質量をもつALPをはじめとする、典型的なWIMPより軽いダークマター候補の痕跡を探る解析も並行して行われています。 KEKも参加する日本の大型低温重力波望遠鏡KAGRA実験では、アメリカのLIGOとイタリアのVirgoという重力波検出器との共同で、重力波のデータを解析しています。KAGRA等に取り付けた検出器内のレーザーの偏光について、ALPの存在によりその偏光面が回転してしまうという性質があります。この性質を用いてALPを検出できる可能性があります。