皆既月食は地球の“夕焼け”? 1月31日は夏より観測に好条件
そうすると太陽の光が届かず、月は真っ暗になりそうですが、なぜ赤く見えるのでしょう? それは、地球の大気に入った光が、屈折して、赤だけ月面に届くから。 これを、もっとイメージしやすくするために。月食の時にあなたが月面に立ったとしたら、どんな光景が見えるのか、考えてみましょう。想像力を働かせて、ぜひお付き合いください。
月面から見える光景を想像してみよう
月食が起こる直前、月面から地球や太陽はどんな風に見えるでしょうか? 月から見上げた空には、月面を照らす太陽が浮かんでいます。そして、ほとんど同じ方向に、夜の地球が見えているはずです。月食が起こるのは満月の日。地球の背後から太陽が月を照らすので、地球からは月の全体が照らされて見えるわけですね。
そして、月食の時間になると。地球が太陽を隠してしまいました。こうなると、太陽の光が届かない月面も真っ暗、かと思いきや……。
月面からは、もしかしたら、図のように見えるのかもしれません。地球の縁に見えるのは、大気。後ろに隠れている太陽の光を受け、ほんのり赤く輝いているのです。 地球で見る夕焼けによく似ていますよね。沈んでしまった太陽の光が、直接は届かないけれど、空(つまり大気)を赤く染めている状態。そして、その空を眺める人の顔も、夕焼けに照らされてほんのり赤く染まっていることでしょう。
ちなみに、地球で夕焼けが赤く見えるのは、大気で散乱しやすい青い光は届かなくなり、赤い色が目立つようになるためです。太陽が頭上にある昼間と異なり、斜めの角度から差し込み、大気の層を長く通過することが影響します。 皆既月食が赤く見えるのも、これと同じこと。地球の夕焼けが、ずっと遠くにある月までをも赤く照らしていると理解することができるのです。
冒頭でも述べましたが、今回の皆既月食はかなりの好条件。 夜空にぽっかりと浮かんだ赤い月を見上げながら、「今、あっちから地球はどう見えるんだろう?」「そもそも月から見たら、地球が太陽を隠す“日食”なのか!」 「月を照らしているのは、地球のどの国のあたりで見えている“夕焼け”なんだろう?」などと、想像を膨らませてみるのも楽しいかもしれません。 ※日本科学未来館では、上記の記事内容を含む「サイエンス・ミニトーク」の実演動画を公開し、スライド資料を無料提供している。
◎日本科学未来館 科学コミュニケーター 谷明洋(たに・あきひろ) 1980年、静岡県生まれ。少年時代から天体観測と写真撮影が趣味。京都大学大学院農学研究科を修了後、静岡新聞記者を経て現職