ゴールドマン・サックスに17年間務めた「伝説の日本人投資家」が予測するトランプ後の世界経済の恐るべき行き先
基本的には悲観的、だが……
二つ目の「移民の規制」が行われれば、若くて低賃金で働く労働力が減少するため、人件費等のコストが上がり、インフレにつながります。ただでさえインフレが加速気味のアメリカでさらなる物価上昇が生じれば、経済は大きく混乱するでしょう。 また、三つ目の関税強化もインフレを加速させます。トランプ氏は中国に60%、他の国にも10%以上の関税を科すと表明しています。牽制の意味もあるので、60%までの極端な強化がされるわけではないにしても、一部でも実行されれば、輸入品を中心にモノの値段が上がることになります。やはり、インフレが進むことになるでしょう。 インフレが加速しすぎては国民生活に悪影響を及ぼしますから、アメリカのFRBがインフレを抑えるために金利を上げようとします。アメリカの金利が上がると、利率の差によって円安が進みます。円安が進むと、輸入に多くを頼る日本では基本的にモノの値段が高くなりますので、トランプ政権下、日本ではいま以上のインフレが進む可能性があります。 日本の円安が進むことで、いま以上にインバウンド事業が過熱するでしょう。一部のホテルや観光地などのレジャー産業は儲かるかもしれませんが、ラーメンやホテルの値段が外国人基準となり、たとえば一杯4000円、一泊10万円まで上昇し、日本人が日本国内で以前のような安価なサービスや食事を楽しむことはできなくなるかもしれません。 かつて日本人が途上国のアジアの国々を旅して経験したように、そうした国々では一定以上のレベルのホテルもレストランも、現地人は利用しません。それと同じことが日本で起こる可能性があります。 ……と、このように額面通りにトランプ氏の経済政策を受け止めると、基本的には悲観的な見通しにならざるを得ないのです。 しかし、投資家たちはまったく違う見方をしています。私は世界中の投資家らと日々意見交換をしていますが、彼らはトランプ後の経済について大変冷静に見ています。