ゴールドマン・サックスに17年間務めた「伝説の日本人投資家」が予測するトランプ後の世界経済の恐るべき行き先
トランプ氏が大統領選挙に勝利を収めてから、間もなく1カ月が経つ。外交、内政に関する予測が各方面でなされているが、最も身近で気になるのは「経済はどうなるのか」という問題だろう。 【写真】「プーチン」が笑顔で女性と踊る姿…他「幼少期の貴重ショット」など大公開! ゴールドマン・サックスに17年間勤務し、このたびその経験をもとに投資家の思考法をあますところなく明かした『億までの人 億からの人』を上梓した金融のプロフェッショナル・田中渓氏が、第二次トランプ政権の世界経済・日本経済の行方について、どこよりもわかりやすく解説する。
額面通りに受けとるならば…
トランプ氏再選後の世界経済に関する予測が飛び交っていますが、ゴールドマン・サックスに17年間勤務した経験をもとに、「トランプ後の世界経済」について考えてみたいと思います。 専門知識やデータを生かした分析もできるのですが、ここではシンプルに、トランプ氏が掲げている経済政策と、第一次トランプ政権の行動原理という二つのファクターから予測をしてみたいと思います。 ただし、これはトランプ氏の倫理観や個人的思想についての是非の話ではなく、あくまで「経済」についてのみ切り取った私の意見であることに、ご留意ください。 さて、率直に申し上げれば、トランプ氏が掲げている経済政策をそのまま並べて教科書通りに考えると、世界経済の見通しは明るくはなりません。 「掘って掘って掘りまくれ」のエネルギー生産の規制緩和を除くと、トランプ氏は3つの大きな経済政策を打ち出しています。ひとつ目は「大規模減税」、2つ目は「移民の流入規制」、そして3つ目が「関税強化」です。 簡単にひとつずつ見ていきましょう。まず大規模減税は、短期的には企業の負担が軽くなることで、米経済にとってはプラスになるでしょう。財政的に余裕が生じた企業は、設備投資や新規事業に資金を投じたり、従業員の給与を増やすなどの施策を採るようになるので、経済を活性化させます。 しかし長期的視点で見れば、大規模減税によって政府の税収が減り、アメリカの財政赤字が増える可能性が高い。財政赤字が増えると、アメリカの経済全体に悪影響が生じます。 長い目で見ると「経済的に良い政策」だとは言えません。