ゴールドマン・サックスに17年間務めた「伝説の日本人投資家」が予測するトランプ後の世界経済の恐るべき行き先
忘れてはいけないトランプの「行動原理」
まず、外交について。日本にいると、トランプ氏は誰彼かまわずケンカを売って、すぐにでも戦争を始めるのではないかという印象を持ちますが、「バイデン政権よりはうまく外交を展開するのではないか」と見られています。 アメリカの戦争や紛争は、実は民主党政権時代に始まったものが多い。トランプ大統領には挑発的な言動も多いですが、第一次政権のときにはどこの国とも戦争を起こさなかったし、どこの国も「トランプは何をするかわからない」という不安から、大規模な紛争や戦争を仕掛けませんでした。 このことから「トランプ時代になれば、世界に一定の安寧が戻るのではないか」と考える投資家は少なくないのです。豪語しているようにウクライナ戦争をうまく終わらせてくれれば、欧州の空を飛行機が飛べるようになり、移動の自由が戻ることで世界経済が活性化するのではないか――端的に言えば、このような見方をしているわけです。 また、関税政策にばかり目が行きがちですが、トランプ大統領はAIや半導体といった産業の振興にも力を入れるでしょうから、新興企業の活動が活性化され、アメリカを中心に世界経済を牽引していく可能性もあります。 最も忘れてはいけない大切なポイント、それは、トランプが生粋のビジネスマンであるということです。第一次政権を振り返れば明白なのですが、トランプはアメリカの株価を大変重視していました。 一説には「トランプは株価が上がっていれば機嫌が良く、下がれば悪くなった」と言われるほど。そんなトランプ氏が、アメリカの経済を悪化させ、株価を下げるような政策を敢えて次々と実行するでしょうか?
原理原則を読め
トランプ氏の基本的な思考法や根本的な原則を考えると、トランプ後の経済は決して暗いものではありません。重要なのは、「額面通りにトランプの発言を受け止めてはいけない。その裏側にある本音と思考を読め」ということです。 世界の投資家が考えているのはそんなに難解なことではなく、「原理原則を考え、合理的に判断を下す」という、意外とシンプルなことなのです。 投資家はどのようにして合理的な判断を下す能力を鍛え、「投資家思考」を身につけているのか。私はその方法を『億までの人、億からの人』に著しました。 投資家や、成功者と呼ばれる人たちは、日々「合理的な判断」を積み重ねて、今日の地位と富を築いています。それは決してマネできないものではなく、誰でも実践可能、訓練可能なものだと私は考えています。 先の読みづらい時代を読むためにも、投資家思考を身につけることは大変有益です。『億までの人、億からの人』が、これからの時代を読み解く力を身につけるための一助になれば幸いと思っています。
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