「決定」したけど「収容」できない!? メディアバイイングの面白さと難しさ[第1部 - 第7話]
1995年、雑誌の販売部数がピークだった頃に経験した雑誌広告
佐藤:僕の仕事は、外資系広告代理店からのオーダーを受けて、社内の雑誌部とやり取りをすることが中心でした。「6月号の『MORE(モア)』の広告枠を取ってください」と頼むのですが、大抵は「取れません、満稿(広告枠がすべて売り切れている状態)です」と断られます。当時の『MORE』はとても分厚く、ほぼ常に満稿の状態で、そこに無理やり頼み込んで広告を入れてもらうこともありました。
佐藤:僕は当時37、8歳だったのですが、雑誌部は入社3年目の20代の方が担当していて、その方に頭を下げて「『コロコロコミック』の広告枠をとってください」とお願いしていました。 杓谷:出版科学研究所の『出版指標年報』によれば、1995年に雑誌の販売部数がピークを迎え、翌年以降は徐々に減少。2000年代からはそのスピードが加速していきます。佐藤さんは雑誌広告が最も盛んだった年に、バイイングを経験したわけですね。 佐藤:国内のメディアバイイングをやるのは初めてでしたが、新鮮で面白い仕事でした。また、「ゆくゆくはインターネットの方をやりたい」と伝えていたので、引き続きインターネット関連の課外活動もやらせてもらえていました。
外資系ならではの精緻なメディアプランニング
佐藤:国際二部に配属されて気づいたのは、外資系広告代理店のメディアプランナーは相当頭を使ってメディアプランニングをしているんだな、ということです。テレビCMの場合は、ビデオリサーチが提供する世帯視聴率(GRP)が取引通貨のようになっており、メディアプランニングもそれを中心に進められます。 杓谷:GRPは「Gross Rating Point」の略で、延べ視聴率とも呼ばれるものですね。視聴率5%の番組に15秒のCMを1本流すと、5GRPと計算されます。 佐藤:僕が担当していた外資系企業のクライアントの場合は、個人ターゲットを重視していたので、調査会社ニールセンの個人視聴率データを使ってプランニングをしていました。しかし、広告枠の買付けはビデオリサーチのGRPをもとに行われるので、個人から世帯へとデータを変換する必要があり、それに多くの時間と労力がかかっていました。 しかも、どれだけ精緻にプランニングをしたとしても、実際にどのくらいの視聴率が取れるのかは放送されてみないとわかりません。参照できるデータは直近1週間や昨年同時期のものに限られるので、当然ですね。一部のクライアントでは、実際の視聴率がメディアプラン段階での予測とかけ離れていた場合、補填を要求されることもありました。そのため、テレビCMの放送が開始すると、皆さんピリピリしていたのを覚えています。