「決定」したけど「収容」できない!? メディアバイイングの面白さと難しさ[第1部 - 第7話]
「決定」したけど「収容」できない!? メディアバイイングの難しさ
佐藤:ある時、とある人気番組の広告枠を数千万円規模で発注しました。その後、メディアの買い付け担当者から「ご依頼いただいた広告枠が無事『決定』しました」と報告を受け、無事に確保できたと安心していました。ところが数日後、同じ担当者から「例のご依頼いただいた広告枠が『収容』できませんでした。」と連絡が……。「なんだその『決定』と『収容』の違いは!」と愕然としました。 人気の広告枠になると、他の広告代理店や広告主からも多くの発注があり、さまざまな大人の事情が絡んでいます。そのため、最初の発注で「決定」となっても、希望通りに広告枠を買えないということが時折発生するわけです。 しかし、広告代理店のメディアバイイング担当というのは、ここからが腕の見せ所です。このような事態が発生すると、担当者はテレビ局に行って直接交渉をします。「今回はこの枠をキャンセルするよう、私が広告主を説得する。この案件では何が何でも広告を出稿したいから、絶対に枠を確保させてほしい」といったように、あらゆる貸し借り関係を駆使して交渉を進めるわけです。 この経験を通じて、外資系のメディアプランニングの精緻さと、プラン通りに広告枠を購入できないこともあるというメディアバイイングの難しさを学びました。ここでの経験は、後にインターネット広告を販売する際にも大いに役立ちます。自分で希望して配属された部署ではありませんでしたが、今にして思えばとても貴重な経験をさせてもらいましたね。
メディアバイイング経験が、後のインターネット広告に活かされた
佐藤:テレビCMを販売促進に使う広告主は、CMの放送に合わせてあらかじめ店頭の棚を確保します。そうすると、テレビCMの配信量に応じて、どれくらいの売上が見込めるかをある程度予測することができます。このやり方は、「どこのウェブサイトのどの広告枠に広告を配信すれば、コンバージョン数が増えるのか」といったインターネット広告の考え方に通じるものがあると言えるかもしれません。 また、後に勤めることになったInfoseekやGoogleでは、「自動車保険」や「転職」といったキーワードに連動した広告枠を販売していました。当時は今のようにオークション形式ではなく、人の手で出稿の管理をしていたので、この国際二部でのメディアバイイング経験がより活かされたように思います。しかしながら、インターネット広告においてはキーワードの数が膨大になっていくので、人の手による管理は早々に破綻することになります。この点については、後ほど詳しく触れたいと思います。 次回は12/26(木)公開予定(隔週木曜日更新)です。