金の価格が20年前の約10倍に 海やパソコンから金を採取!ゴールドハンターに密着
今回のテーマは、「令和のゴールドラッシュ!~黄金の国よ再び~」。 株価が大きく揺れる中、安全資産とされる「金」に注目が集まっている。金の価格は20年前の約10倍に上昇し、世界の株価上昇率を大きく上回っている。国際基準の50メートルプール3杯弱しか採掘されていないといわれる世界の金だが、日本には、世界有数の金資源が活用されないまま眠っているという。独自の技術で金を採りだす、現代のゴールドハンターに密着した。 【動画】金の価格が20年前の約10倍に 海やパソコンから金を採取!ゴールドハンターに密着
驚きの技術で海に眠るゴールドを! 近海での実験を独占取材
人類が初めて金を手にしたのは、今から約6000年前といわれている。しかし、これまでに採掘された量はわずかで、その希少性の高さから、世界で争奪戦が繰り広げられている。 そうした中、日本の技術で新たな鉱脈をつかもうとする人々がいた。 日本一酸性が強い泉質で、古くから本格的な湯治場として知られる秋田・仙北市の玉川温泉。その温泉から、世界で初めて金を採りだした研究チームがいる。そのひとりが、日本屈指の製造会社「IHI」主任研究員・福島康之さんだ。
一般的には、マグマに含まれる金が熱水に溶け出し、長い年月を経て地表近くで見つかるのが金の鉱脈と考えられているが、研究チームは“同じマグマ由来の温泉からも金が採れるのではないか”と考えた。試験の結果、福島さんたちは、金鉱山で採掘するよりも高い濃度で金を回収することができた。
成功のカギは、独自に開発し、特許を取得した黒いシート。IHI技術開発本部にある実験室には水や海水で育つ藻の一種「ラン藻」が並んでおり、これが黒いシートの素だという。
この藻には液体の中にある金を吸着する性質があり、金が溶けた溶液の中に黒いシートを入れると、約1週間で液体が透明に。金がすべてシートに吸着されたため、透明になったのだ。「金に反応して回収できるのがユニークな点。金には黄色のイメージがあるが、金ナノ粒子はすごく小さな粒子として析出して、赤い色に見える」と福島さん。
この大きさのシート50枚分を燃やすと、これだけの量の金が採れる。 伊豆諸島・青ヶ島の沖合では、2021年から大規模な金の回収試験が行われてきた。水深700メートルの場所に金の含有量が多い熱水が噴き出ており、そこに、福島さんが開発したラン藻シートを沈めた。一連の試験は、IHIが海洋研究開発機構と共に行っているが、一番のネックがコスト。深海はたどり着くまでに莫大なコストがかかり、今の時点では採算が合わないのだ。 福島さんは、東京大学大学院で主に半導体の研究をしてきた。2013年に入社したIHIは、年商1兆3000億円を超える巨大企業。2016年、福島さんは新規事業として会社に提案し、金を回収するプロジェクトをスタートさせた。 原点は、中学生の頃に読んだ本。「海水に50億トンの金が溶けているということが書いてあり、『すごいじゃん』と印象に残った。『回収しようと思えばできるんだ』と、ずっと引っかかっていた」と話す。