ドライバー不足、路線廃止、自動運転! 崖っぷち「バス業界」は本当に変われるのか? 2024年を総括する
地域格差拡大とデジタル化の影響
次に、サービスの地域間格差の拡大と、環境規制や福祉ニーズへの対応と影響について説明する。 ●サービスの地域間格差の拡大 最近では、デジタルトランスフォーメーション(DX。企業や組織がデジタル技術を活用して、より効率的かつ柔軟に対応すること)の普及により、スマートフォンやパソコン、電話などを使ってバスを呼び出すシステムが広がっている。さらに、AIが呼び出しや予約の状況に応じてバスの最適経路とダイヤを自動で生成し、運行するシステムも定着しつつある。 例えば、みちのりホールディングス(東京都千代田区)では、朝と夕方のラッシュ時間帯に定時・定路線の路線バスを運行し、日中は予約制にして柔軟な運行を行う方式を採用している。このように、DXを効果的に活用するためには、コストがかかる上、事業者や支える側に強い改革意欲と決意が求められる。また、地方自治体の首長が公共交通の改革にどれだけ前向きかによって地域間で大きな差が生まれ、格差が拡大している。 ●環境規制や福祉ニーズへの対応とその影響 路線バス事業では、引き続き環境対策の強化と、ユニバーサルデザイン(すべての人が使いやすいようにデザインされた製品や環境)を推進する福祉ニーズへの対応が求められている。2024年問題の影響もあり、大都市部で活躍したものの、環境性能が低下した ・ノンステップバス(車両の床が低く段差がないバス) ・ワンステップバス(乗降口が車内の床と一段の段差を持つバス) の経年車が増加している。新車の発注は伸びず、バス事業者とバスメーカーの両方が厳しい状況が続いている。
ポジティブなトピック
問題が起きれば、その解決策が生まれ、ポジティブなトピックも出てくる。以下の三つが挙げられる。 ・労働環境の改善と工夫 ・公共交通の利用促進と輸送効率の向上 ・新しい技術の普及 同じく解説しよう。 ●労働環境の改善と工夫 2024年問題はバス事業者にとって大きな課題となっているが、それに対して何もしないわけにはいかない。新しい労働環境を作り出すための工夫も進んでいる。バス事業者は、ドライバー確保のために、 ・大型2種免許取得に対する財政的支援や給与資金の確保 ・女性ドライバーの採用強化(女性用の更衣室やトイレなどのインフラ整備) ・外国人ドライバーの採用検討 ・嘱託雇用年齢の上限延長 などを継続的に進めている。また、行政もバス事業者を支援するために、路線バスドライバーの給与向上のための税金の投入や、自衛隊員や自治体職員の路線バスドライバーへの転用を検討している。こうした動きは、バスの問題解決に向けて、官民が協力する重要な機会となっている。 ●公共交通の利用促進と輸送効率の向上 バス事業を継続するためには、ドライバーの確保が重要であり、利用者を増やして収益性を高めることが大切だ。例えば、小田原市では、自家用車から公共交通への利用転換を目指し、道路の混雑緩和と二酸化炭素排出量の削減を同時に進めるために、 ・行政 ・バス事業者 ・ショッピング施設 が連携して事業を行っている。具体的には、一定額以上の買い物をした人に、先着で路線バスの無料乗車券を配布している(買い物が3000円以上(税込み、合算可)の場合、1日2枚まで配布)。このように、公民連携で路線バスの利用を促進する取り組みも進んでいる。