5度のがんを経験した元IT社長が語る、“病後”の生活と生き方
40歳で最初のがんになり、53歳の現在までに脳腫瘍、悪性リンパ腫、白血病、大腸がん、肺がんを乗り越えた高山知朗さん。30歳で起業し「会社=自分」だったIT社長が、闘病を経て、会社売却を決断するに至るまでに、どう“人生の方向転換”を果たしたのかを語る。『5度のがんを生き延びる技術 がん闘病はメンタルが9割』より一部を抜粋して掲載します。
これまでのがん治療が残したデメリット
病気の治療には必ずメリットとデメリットがあります。 抗がん剤には腫瘍を殺すというメリットと同時に、正常な細胞をも痛めつけるというデメリットがあります。 手術には腫瘍を摘出できるというメリットとともに、後遺症が残るというデメリットがあります。 私が受けた治療の結果、現在も残る障害や症状などのデメリットを挙げてみます。 ー 視覚障害 脳腫瘍の手術の影響で、視覚障害が残りました。視野を縦横に四分割したときに、左下の4分の1のエリアが見えません。 このため、多くの人で混み合った駅を歩いていると、左側にいる人が見えずにぶつかってしまいます。 外出の際はヘルプマークをつけています。車と自転車は手放しました。 ー 帯状疱疹後神経痛 悪性リンパ腫の抗がん剤治療中に、合併症で帯状疱疹になり、後遺症として帯状疱疹後神経痛が残ってしまいました。 もう発症から10年以上経ちますが、右脇の下に針が突き刺さったままになっているような持続的な強い痛みが、24時間365日続いています。 根本的な治療法はなく、鎮痛薬のプレガバリン(リリカ)を朝晩、そしてトラマドール(トラマール)を3~4時間おきに飲んでしのいでいますが、痛みを完全に抑えることはできません。 これが私のQOL(生活の質)を最も損なっています。 ー 骨密度の低下 白血病の移植治療による影響。これが原因で腰椎を圧迫骨折しました。 ー 禁酒 抗がん剤治療や移植治療の影響で肝臓に良性腫瘍ができているため、以前は毎日飲んでいたお酒を完全にやめました。でも娘の二十歳の誕生日に解禁する予定です。 その他、体力の低下、発熱しやすさ、疲れやすさ、髪の毛が細く少なくなった、左足の痺れ、顔の皮膚の白斑等、治療で残った身体的な不都合はいろいろあります。 でもどれも小さいことだと今は思っています。なんといっても、生きていられるだけでありがたいのですから。 病室で布団にくるまって苦痛を耐え忍んだり、生死をさまよったりした日々のことを思うと、命があって、自分の家で家族と過ごせること、当たり前のように明日が来ることが、本当にありがたいと思って生活しています。