実は熾烈なセ・パ盗塁王争い。元巨人の足のスペシャリストが独自見解で占う
交流戦の裏で熾烈な盗塁王争いが演じられていたのをご存知だろうか。まず最も走ったのは誰なのか? 交流戦の盗塁数は1位が日ハム・西川遥輝の8個、2位が広島・田中広輔の6個、続いて中日の大島洋平、中日の新人、京田陽太、西武の新人、源田壮亮が、それぞれ5個で並んで続く。交流戦前にパ・リーグのトップは源田だったが、西川が16日のヤクルト戦で一気に3盗塁を決めるなどして交流戦で逆転した。 またセ・リーグも田中、大島、京田の上位3人が順調に数字を伸ばし、現在、田中と大島が2個差。こちらも熾烈な争いがシーズン最後まで続きそうな勢いである。 セ、パ共に京田、源田というショートのポジションの新しいスピードスターが出てきたが、交流戦明けから再スタートする盗塁王争いについての展望を元巨人の足のスペシャリスト、鈴木尚広氏に聞いてみた。 鈴木氏は、「最多数だけの盗塁王を僕は認めません。盗塁の企図数が増えれば、当然、盗塁数は増えます。失敗を恐れないメンタルは凄いかもしれませんが、成功率と盗塁数が両立してこそ本物です。例えば成功率が6割で、盗塁王って恥ずかしくないですか? チーム貢献の盗塁とは何か。盗塁することの目的、考えのどこに重きを置くかが大切なんです」と、独自の辛辣な哲学を持っている。 その鈴木理論にあてはめると、表のようにパ・リーグで成功率も盗塁数も伴っているのが西川だ。成功率は90.5%もある。逆に成功率が低いのが、60.7%の2年前のトリプルスリー、柳田である。 「パ・リーグでは断然、西川選手です。柳田選手は、足の速さで勝負しているタイプ。こういう素材で勝負するタイプは波が出ます。年を重ねると難しくもなります」 鈴木氏は、「擬装スタートが多いので、そこが気になり」、西川本人に『なぜ?』と質問したことがある。すると西川は『擬装ではなく、全球スタートを切っている』と答えたという。 「1球、1球、スタートを切ることで、このクイックは速かった、遅かったと、どこで走るかの基準がわかってくると言うんです。確かに全球走る意識を持ってアプローチを続けていれば、映像やデータで見ているだけではわからないものを感じ取って判断ができます。彼は非常にスタートがいいのですが、こういう裏付けがあるからなんだ、と関心しました。僕は、5球あればスタートは1、2球でいいという考え方でした。全球にスタートを切るのは、メンタルも体力も疲れて消耗します。また牽制で刺される危険性も増します。しかし、彼は帰塁の意識は1%くらいしかなく、牽制には意識せずとも反応できると言います。確かに下手な牽制は怖くありませんが、成功率も高く、毎年コンスタントに盗塁を記録している理由がよくわかります」 智弁和歌山から2010年にドラフト2位で日ハムに入団した西川は、主力として起用されはじめた2013年から、22個、43個(盗塁王)、30個、41個と、毎年安定した盗塁数をマークしてきた。その姿勢も含め鈴木氏が評価するのも当然かもしれない。それでも「中間走も速いのですが、スライディングでは、時折タイミングを合わせて滑り込みスピードが落ちるケースがあります。まだ改善の余地はあります」と指摘した。 またパでは西武勢にも注目しているという。 「西武勢も、辻監督が就任しチームとして機動力を全面に出しているので、新人の源田選手、外崎選手にもチャンスが出てくるでしょう。中日の京田選手もそうですが、スピードがある新人の2人は、今はとにかく必死なんだと思うんです。非常に楽しみですね」