実は熾烈なセ・パ盗塁王争い。元巨人の足のスペシャリストが独自見解で占う
一方、セ・リーグで鈴木氏が推すのは、横浜DeNAの梶谷隆幸とヤクルトの2年連続のトリプルスリー、山田哲人の2人だ。梶谷はケガの影響があり9個、山田もバットの不調と比例するように盗塁の方も9個と、田中、大島に差をつけられているが、鈴木氏は梶谷、山田の81.8%の成功率を評価している。一方、盗塁数ではトップの田中の成功率は66.7%と低い。大島も73.7%だ。 「広島の田中選手、中日の大島選手は、やはり成功率が物足りません。それに対し梶谷、山田の2人は、確実にチームの勝利に貢献する形で走っていますし、盗塁に関する嗅覚を持っています」 過去に一人しかいない(中日、阪急で達成した河野旭輝氏)両リーグ盗塁王の期待がかかっていた阪神の糸井嘉男に関しても鈴木氏は厳しい見方をしている。 「昨年、パ・リーグで53盗塁で、西武の金子選手とタイトルを分けた阪神の糸井選手に関しては、セ、パの両リーグ盗塁王は無理だと思います、現在、足に故障を抱えていることもありますが、そもそもセはパに比べてバッテリーの走者への注意の払い方が違います。パの野球は、走者を気にするより、打者勝負の傾向がありますが、セの野球はそうではなく、クイックや牽制など細かなテクニックに長けた投手が多いんです」 前述したが、中日の大島、京田、西武の源田、外崎、金子、秋山ら、監督、首脳陣がガラっと入れ替わって機動力を全面に打ち出しているチームのメンバーが盗塁ランキングの上位に来ているのも、今季の特徴だ。 鈴木氏は、「静かに野球をやっていれば静かに終わってしまいます。巨人の坂本選手は、今年は走塁への意識を強くもって盗塁数を増やしていますが、巨人が連敗を抜け出せなかった理由には、やはり機動力を使えなかった部分もあると思います。逆に西武は、金子選手、源田選手の1、2番が自由に動くので、他球団にとっては脅威になっています。盗塁、走塁といった機動力が、この先ペナントレースの行方を左右する要素のひとつであることは間違いありません」と、各チームの“足”に注視している。