【心理カウンセラー・中元日芽香(元乃木坂46)】推し活はリアルな仕事に生かせる?
アイドルからのセカンドキャリア。「推される側」の経験は今の仕事に生きている?
私の場合は、推される側のアイドルから、セカンドキャリアとして心理カウンセラーになりました。当時の私は21歳。ジャンルの違う新たな職業に挑戦するとき、多くの人が経験する学生時代の就職活動などを経ていないことに少し負い目を感じる時期もありました。けれど、私が選択したのはたった1つの自分だけのルート。わくわくする気持ちと、自信をもって前を向いていこう! という気持ちのほうが強かったと思います。 初めは無我夢中でしたが、だんだんとアイドルの仕事よりも、心理カウンセラーとしての仕事の期間のほうが長くなり、アイドル時代の私をリアルタイムでは知らないクライアントの方も増えてきました。私をきっかけに、乃木坂46の過去の映像を見てアイドルの推し活に興味を持ってくれる方もいらっしゃるようです。また、現在の自分を発信することで、乃木坂46時代のファンの方からも、「元気そうな姿を見られてうれしい」「やりたいことが見つかったんだね」など、好意的な反応をいただくことがあります。 講演会などのオファーをいただいたときに「アイドル時代に推していました」「グループのファンでした」と言ってくださる方もいらっしゃいます。私のことを詳しく知ってくださっていた方と、セカンドキャリアの心理カウンセラーとしてご一緒できると、素直に「心理カウンセラーとアイドルの仕事、両方をやっていてよかったな」と思います。
セカンドキャリアとして心理カウンセラーを選んでよかったこと
セカンドキャリアをスタートした当時は、アイドルと心理カウンセラーとは全く別の仕事だと考えていました。アイドルは「みんなに元気を与えたい」と外に向かう仕事。一方、心理カウンセラーは、人知れず静かなところで、一対一で心に向き合うというイメージ。だから、アイドルで得た経験を生かす、ということよりも、1から勉強し直すぞ、という気持ちでした。ところが、心理カウンセラーの仕事を始めてみると、アイドル時代に培ったスキルや鍛えられた力が「ここで生きるのか」と感じることが多くありました。 そのひとつがコミュニケーションスキルです。カウンセリングの仕事では、10代から50代後半の方まで、広くお話を聞かせていただきます。年長の方からすると、社会人1年目ぐらいの年の私が相手で大丈夫なのかな? 私もきっと緊張してしまうだろうな、と不安だったのですが、これはアイドル時代の経験にすごく助けられました。10代の頃から、ファンの方の年齢層も幅広く、スタッフさんはほぼ全員年上。初対面の方を含め、さまざまな年代の方々と現場や握手会で接してきたことが、今でも私のコミュニケーションを支えてくれています。 もうひとつは発信力です。臨床心理士の方とお話する機会があったのですが「カウンセリングについて知ってもらうにも、なかなか多くの人に響くように伝えられない」、「専門分野と発信を両立するのは難しい」とおっしゃっていました。確かに、経験豊富なカウンセラーさんや名医と呼ばれる方々でも、メディアで流暢におしゃべりできるかというと、緊張される場合も多いのだと思います。私は現在Podcast番組「中元日芽香の『な』」のパーソナリティを務めていますが、ラジオでの発信が昔から好きで、楽しんで取り組ませていただいています。10代の頃から触れていたメディアを使って、メンタルヘルスについて関心を持つきっかけを作れたらうれしいと思いました。心理カウンセリングについて知っている人と知らない人、専門家と悩んでいる人、その2者間をつなぐような役割が今の私にできることであり、以前の仕事で得た財産でもある、と思っています。