聞こえにくいと思ったら早めの補聴器が正解!【40代から増える「耳鳴り・難聴」に要注意! ⑨】
補聴器なんてまだまだ先のこと…と思っていないだろうか? もちろん聞こえにくい度合いにもよるが、最近では早めの使用が推奨されている。それはどうしてか? 選ぶときの注意点などについて、耳鼻咽喉科医で医学博士の石井正則さんに伺った。
補聴器と集音器はまったく別物!
最近、聞き返したり、聞き漏らしたり、聞き間違いをすることが増えた、テレビの音量が大きいと指摘されたことはないだろうか? 年齢とともに老眼が進むように、耳も少しずつ加齢の影響で聞こえにくくなる。 とはいえ、まだ会話にそれほど支障がないので、補聴器までは必要ないと思っているかもしれない。しかし、40代でも50代でも軽度や中等度の難聴になる人はいるし、親の難聴が進んで会話に苦労するという声もよく聞く。そんな自分や親世代のため、さらに将来に備えて補聴器の基礎知識を持っているととても役に立つ。 「さまざまな研究が進むなかで、難聴は認知症の発症リスクを高めることがわかっています。例えば、軽度難聴なら2倍、中等度難聴では3倍、高度難聴では最大5倍以上に高まるというのです。 以前には補聴器はあまり早くから使わないほうがいいという意見もありましたが、今は耳の機能が衰えてきたら、できるだけ早いタイミングで使用することが推奨されています」(石井先生) 親のためにと思い、「補聴器だと思って集音器を購入してプレゼントしたが、その不快な聞こえ方に閉口し、まったく使ってもらえなかった」といった体験談も耳にする。 「まず補聴器と集音器はまったく別物であることを知ってください。特に格安の集音器は全体の音のボリュームを上げ下げするだけのものです。しかし、私たちが音を聞いているメカニズムはもっと複雑です。 例えば、『カクテルパーティ効果』という言葉を聞いたことはありませんか? パーティ会場に入ると全体がザワザワ、ガヤガヤして雑音に聞こえます。そこで話されている内容は聞き取れません。しかし、話したい相手と会話を始めたり、気になる話題に注意を向けると、まわりの雑音が消えて、内容を聞き取れるようになります。 それは、脳がまず全体の音を雑音化して全体を把握しようとします。そこから聞きたい音だけに集中して、そこだけ音を大きくすることで聞き取っているのです。こうした脳の機能を『カクテルパーティ効果』と呼んでいます。 私たちのまわりにはさまざまな音があふれています。ラジオから流れてくる音や音楽もあれば、外では自動車の走行音や歩行者の靴の音、静かな場所ではエアコンや冷蔵庫のかすかな音、郊外に行けば鳥の声や川のせせらぎなど。それらすべてを同じように受け止めて聞いていたら大変なので、無意識のうちに、その中から聞きたい音だけを選んで聞いているのです。 『聞こえる』ことと、『聞き取る』ことは違います。こうした脳の機能を踏まえたうえで補聴器を選び、付き合っていく必要があります。単にまわりの音を大きくしたり小さくしたりするだけの集音器では、不快でしかありません」