初期段階で自覚症状がない「肝臓がん」のサインとは?沈黙の臓器だから…知っておきたいこと|医師解説
「沈黙の臓器」といわれる肝臓。肝臓がんは、初期の段階では自覚症状がなく、ある程度進行してから症状が現れることが多いのが特徴です。 肝臓の機能が低下しているサインについて医師が解説します。 〈写真〉初期段階で自覚症状がない「肝臓がん」のサインとは?沈黙の臓器だから…知っておきたいこと ■「肝臓がん」とは、どのような病気なのか? 年齢別にみた肝臓がんの罹患率は、男性では45歳から増加し始め、70歳代に横ばいとなります。 女性では55歳から増加し始めて、罹患率、死亡率は男性のほうが高く、女性の約3倍であるといわれています。 日本国内の肝臓がんによる死亡率の年次推移は、男女とも最近減少傾向にあり、罹患率は男性で減少、女性で横ばい傾向になっています。 肝臓がんは、主にウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患などによる慢性的な炎症で起こります。 そのうち、約90%はB型肝炎・C型肝炎ウイルスであり、長期間ウイルスに感染し、肝細胞の破壊と再生が繰り返されると、やがて肝臓が硬くなり肝硬変になります。 その過程で、がん細胞を増殖させる「がん遺伝子」や、本来は細胞のがん化をおさえる役割をもつ「がん抑制遺伝子」が影響を受けて、遺伝子の突然変異が積み重なり、肝臓がんが発生するといわれています。 肝臓がんの治療では、肝切除手術、ラジオ波焼灼療法、カテーテル治療、抗がん剤治療、分子標的薬、肝移植などが挙げられます。 ■「肝臓がん」のサイン 肝臓は「沈黙の臓器」と言われています。 初期には自覚症状がほとんどなく、進行した場合には、腹部のしこり、腹部圧迫感、腹部の痛みなどが出現する場合があります。 肝臓がんが進行すると肝臓の機能が低下し、黄疸・むくみ・かゆみ・倦怠感などの症状が現れます。 肝臓がんは、初期には自覚症状がほとんど出ないため、肝臓は沈黙の臓器とも呼ばれています。 通常、健康診断やほかの病気の検査の際に、見つかる場合も少なくありません。 「肝臓がん」の意外なサインのひとつとして、黄疸が挙げられます。 肝臓がんの病状が進行すると肝臓の機能が低下し、皮膚や目が黄色くなる黄疸が現れます。 黄疸は血液中のビリルビンが増加することで、発症するものです。 ビリルビンはヘモグロビンが分解されることで生じるもので、通常であれば肝臓で処理されますが、肝臓の機能が低下するとビリルビンが処理されなくなり、血液中に増加し黄疸が現れます。 黄疸は皮膚や目が黄色くなるのが主な症状ですが、疲労感や頭痛なども現れることもあるようです。 また、「肝臓がん」を疑う意外なサインとして、むくみが挙げられます。 肝臓がんになると、むくみやすくなるといわれていて、むくみとは、何らかの原因によって皮膚もしくは皮膚の下に水がたまっている状態です。 肝臓は不要な物質を解毒し排出するはたらきがあるため、肝臓の機能が低下すると不要な物質が排出されず血液循環が悪化しむくみが発生するといわれています。 さらに、かゆみも肝臓がんの症状のひとつです。 肝臓がんになると、肝臓で代謝される物質が代謝されなくなり、体内の物質が不足したり過剰となったりすることで、かゆみが生じると考えられています。 肝臓の機能が低下することで、倦怠感が現れる場合がありますし、肝臓がんの腫瘍が大きくなると、腹部のしこり・圧迫感・痛みを自覚することがあります。 気になる症状があれば、消化器内科を受診しましょう。 ■まとめ 「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓。臓器の中で一番大きな臓器で、この肝臓にできるがんを肝臓がんと言います。 肝臓がん(肝細胞がん)の主な原因は、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスへの感染・アルコール性肝障害や非アルコール性脂肪肝炎の罹患などです。 さらに、加齢・喫煙なども肝臓がん(肝細胞がん)のリスク要因として考えられています。 ヒトの体に存在する臓器の中では肝臓は最も大きく、肝臓がんは、初期の段階では自覚症状がなく、ある程度進行してから症状が現れることが多いのが特徴です。 肝臓がんを早期発見・早期治療するには、定期的に検診を受け、少しでも気になる症状があるときはすぐに受診することが大切です。 心配であれば、消化器内科など専門医療機関を受診して相談しましょう。 文/甲斐沼孟(医師)
甲斐沼 孟