乳がん、卵巣がんの血縁者がいる場合、どうする?二人の「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」の女性の選択【更年期女性の医療知識アップデート講座】
女優アンジェリーナ・ジョリーが公表した「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」。9人に1人が乳がんになる時代、血縁者に乳がんや卵巣がんの人がいる場合、遺伝性のがんが心配な人も少なくないはず。今回は、がん発症前に遺伝学的検査を行いHBOCと判明した二人の女性を取材。その後、乳がんを発症し治療した、貴重な体験を伺った。
70歳までに50%前後の確率で乳がんを発症ーーHBOCとは?
遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC =hereditary breast and ovarian cancer)は、遺伝性のがんのひとつ。誰もが持つBRCA1(ビーアールシーエーワン)、BRCA2(ビーアールシーエーツー)という遺伝子に、生まれつき変化した状態(病的バリアントと言う)がある人は、がんを発症しやすい体質であり、乳がん、卵巣がんだけでなく前立腺、膵臓などでがんができやすいこともわかっている。 BRCA1とBRCA2という遺伝子のどちらかに変化があっても、必ず発症するとは限らない。乳がんの発症リスクは、BRCA1遺伝子に変化のある人は、そうでない人のリスクが10%なのに比べ、70歳までに57%の確率で乳がんを発症する、BRCA2遺伝子に変化のある人は、70歳までで49%が発症するというデータがある。 これから紹介するお二人は、血縁者に乳がんや卵巣がんの方が複数いることから、がんではないときに、HBOCかどうかを調べる遺伝学的検査を受ける決断をした人たちだ。 がん未発症で、なぜHBOCを調べようと思ったのか、その葛藤を話してくれた。また、HBOCと判明したあと、どのような検査や治療を行ったのかについても、語ってくれている。お二人は、ご自身の体験が血縁者に乳がん、卵巣がんの方がいる皆さんの役に立てば、と今回インタビューに快く応じてくださった。
自分以外の家族が次々と乳がんに。恐怖と不安を感じて、がん発症前に遺伝学的検査を選択
◆山村恵美さん(仮名) 56歳 家族背景/父、母、妹二人(恵美さんは三姉妹の長女) 《家族の乳がん発症時期》 1997年 母(53歳で乳がん罹患) 現在80歳 1997年 叔母(母の妹、52歳で乳がん罹患) 姉が乳がんになり、乳房を触って気づき受診。翌月乳がんと判明。 現在79歳 2002年 妹(次女)(28歳で乳がん罹患)亡くなられた 2012年 妹(三女)(36歳で乳がん罹患) 現在48歳 2016年 恵美さん(48歳で早期乳がんを発見) 現在56歳