海に沈んだ「幻の古代都市」5選、近年になり続々と発掘 いったい何があったのか
古代ローマの別荘地、エピダウロス
壮大な古代劇場で世界的に知られているギリシャの都市エピダウロスは、アルゴリド半島の最も重要な交易港の一つだった。 ローマ時代、肥沃な土地と海へのアクセスの良さから、多くの別荘がこの海岸沿いに建てられた。これらの邸宅は町の外にあり、農業のほか、ワイン、油、そしてローマ人の好物だったガルムという魚醤を製造するために使われていた。 ところが、それから100年余り経った5世紀に、この地域でいつもよりも規模の大きい地震が起こり、海面上昇の影響もあって一部の別荘がアギオス・ブラシウス湾からの海水によって浸水した。 1967年、海洋学者のニコラス・フレミング氏は、アギオス・ブラシウス湾に沈んでいた構造物をいくつか発見した。さらに1971年には、考古学者のチャラランボス・B・クリツァス氏が、地元住民の間で水没都市と呼ばれていた遺跡を発見した。これが後に、古代ローマの別荘地跡だったことがわかった。 海岸からわずか45メートル、水深2メートルの海底にある遺跡は、3つの空間に分かれていた。ひとつは広い貯蔵室で、大量のワインを貯蔵・発酵させるため貯蔵槽の破片が20個ほど見つかった。別の空間にはブドウの圧搾機が置かれていたと思われ、3つ目の空間は浴室として使われていたようだ。
文=Carles Aguilar/訳=荒井ハンナ