結婚してもセックスはしない「友情結婚」相談所を始めて10年目。500人以上を成婚に導く【カラーズ・中村光沙】
カミングアウトしたくない人向けのサービスを
起業すると決めたものの、肝心のサービス内容が決まらない。 そんなときふと、ある違和感が頭をよぎった。 ニューヨークでは、街にも職場にもたくさんいるゲイの男性が、なぜか当時の神戸では見当たらない。不思議に思った中村は、夜な夜な神戸の街をさまよったが、ついにセクシャルマイノリティらしき人の姿を見つけることはできなかった。 だが、ネットで検索すると、神戸にも確かにセクシャルマイノリティが存在していることが分かる。ここで中村ははっとした。 「ニューヨークの人でも日本の人でも同じ人間ですから、セクシャルマイノリティの人は必ず一定の割合でいるはずなんです。 でも街の中でそうした方々の姿を見かけないということは、おそらくカミングアウトしたいけれどできない人、もしくはしたくない人もいるのではないかと気付いたんです」 そういう人々にも困りごとや必要なサービスはあるはず。思案しているうち、中村はネット上である言葉に行き着く。それが「友情結婚」だった。 当時は、出会い系サイトやmixiの掲示板、東京で2～3カ月に一度開かれるお見合いパーティー程度しか、友情結婚を希望する人同士の出会いの場がなかった。 「私がやるべきなのは、これだ」 中村はそう直感した。
当事者男性との「利害の一致」
事業を興すために上京した中村はアルバイトをしながら、仲間集めを始める。セクシャルマイノリティ向けの事業を企てる上で壁になるのは、ニーズの理解だった。 ネットで探しためぼしい企業や人に3通のメールを送ると、1通だけ返事があった。それが今も事業をサポートしている、ケンさん（仮名）からの連絡だった。 ケンさんはゲイではあるものの、女性と友情結婚をした当事者だ。自身の経験を踏まえて、ブログに友情結婚についての情報をつづっていたところ、中村からの連絡を受けた。 「ケンは最初、『変な女から連絡がきたぞ！』って思ったみたいです（笑）。 彼は友情結婚当事者で、自分の経験を踏まえて世の中に発信をしたいことがたくさんありました。でもカミングアウトをしていないので、顔出しをして堂々と活動することができない人でもあったのです」 品川プリンスホテルのラウンジで初対面を果たした2人は、友情結婚相談所をビジネスとして立ち上げるという企画で意気投合。知見が少ないが表立った活動ができる中村と、知見はあるものの顔出しをしてビジネスができないケンさんの利害が一致。 ケンさんからアイデアをもらい、中村は本格的な事業立ち上げに向けて動き始めた。
