「転んでもただでは起きない」駒澤大の逆襲はあるか…箱根駅伝メンバー選考レースで出場9名全員が自己記録! 「今回は挑戦者として伸び伸び戦える」
藤田監督は4年生の奮起に期待
村上は、「あとちょっとで61分台だった。62分台と61分台では違うので、悔しいです。順位も3位でぜんぜん満足できない」と、不満気な表情だった。それでも藤田監督は、村上の走りを「優勝争いをするなど、よく頑張った」と高く評価した。 吉本は「後輩3人に負けてしまって、箱根を走れるかどうか分からない……あとは、選抜合宿でアピールするしかないです」と、悔しそうな表情を浮かべた。 藤田監督は、4年生の吉本に期待していたはずだ。 全日本が終わった後も、世田谷ハーフを終えた後にも、「篠原(倖太朗)だけじゃダメです。他の4年生が出てこないと」と、4年生の奮起を期待していた。 「夏合宿に篠原が来てくれたので、4年生が少し変わったんです。これからは篠原だけじゃなくて、4年生たちがどうチームを引っ張って、後輩たちに何を残していくのか。それが重要ですし、そのためにも今回、4年生が出てきてほしかったんですけどね」 藤田監督の思いは、吉本もよく理解している。 「関東インカレでは僕ら4年生がぜんぜん走れなくて、夏まで悔しい思いをしてきました。夏合宿に篠原が来てくれたことでチームが活気づいたし、自分たちもやってやろうという気持ちになれました。ただ、やっぱり今も篠原に頼り切りになっているのが現状で……。箱根まで時間が短いですが、自分たち4年生が逆に篠原に少しでも頼られるようにやっていきたいと思います」 吉本は、厳しい表情でそういった。
ハーフ2戦での収穫と課題
藤田監督は、箱根に向けて選手の足並みが揃ってきたことには安堵していたが、一方で「この結果は手放しで喜べるものではない」と表情を引き締めた。 「課題は、レース展開ですね。吉田(礼志・中央学大)君の後ろについていた帰山が前に出てレースの主導権を握ったんですが、15キロで前に出たことは悪くはない。でも、前に出る際の行き方ですよね。ジワッと上げるとみんなついて来てしまうんで、優勝した大東文化大の選手のように行く時はガツンと行かないと。前に行って勝負した時、勝ち切る力をつけないといけないですが、これを次にどう活かすか、ですね。あと、上尾は記録が出るので、世田谷を走った青学大の選手がここで走れば上位に来ていたと思います。そこはやっぱり頭の中に入れておかないといけないと思います」 今回の上尾は、勝負を意識させるのと同時に、平坦なコースの上尾で初めてハーフを走る選手はもちろん、箱根を目指す選手にハーフを走れる自信をつけてもらうという狙いもあった。選考レースのプレッシャーがかかる中で9名全員がPB、7名が63分切りという結果は、その狙いを十分クリアするものだったと言えよう。 「今回の上尾で、転んでもただでは起きない。それを他校に示すことができたと思います。あとは、箱根まで油断しないことですね。前回は3冠がかかっていてガチガチでしたが、今回の箱根は挑戦するという気持ちで伸び伸び戦えるはず。出雲、全日本で負けて、最後に“駒澤の逆襲”を見せられるか、ですね」 そう語る藤田監督の表情からは、その自信が見て取れた。
(「箱根駅伝PRESS」佐藤俊 = 文)
【関連記事】
- 【写真】「走っているときとのギャップが…」上尾ハーフ表彰式でおっとり笑顔を見せる帰山(3年)ほか、全日本、出雲、前回の箱根まで駒澤大の激走+歴代箱根名シーンのすべてを見る
- 【全日本の希望】「泣いている場合じゃないぞ」全日本駅伝、駒澤大が涙の16位→2位の超人的な大まくり…5連覇失敗は「敗北」か「収穫」か? “箱根ではやり返す”
- 【出雲の敗因】「みんな最後の詰めが…」駒澤大はなぜ出雲3連覇を逃したか? “唯一の勝てる展開”アンカー勝負での敗因と光明「そこが篠原の甘いところ」
- 【篠原の箱根】青学大の逆転劇に「自分が4区なら…」駒澤大唯一の区間賞、1区・篠原倖太朗は“歯がゆさ”を口にした…新主将は「もう一度、3冠に挑戦する」
- 【真相】「圭汰が抜かれるなんて…」駒澤大の食堂は静まり返った「こんなこと今までなかった」監督&選手が証言する“最強軍団が青学大に完敗するまで”