世界幸福度ランキング1位・フィンランドの高校生が受ける授業が面白い!スマホと広告、過剰な消費への問題提起…「良い人生って何だろう?」
◆マズローの理論にもふれる 4.アブラハム・マズローの理論 マズローはアメリカの心理学者で、ニーズを生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現の欲求の5段階に分けたピラミッド型モデルがよく知られている。 マズローの理論は批判、修正されていることにもふれ、ピラミッドではなく波のように重なり合う波状の図も見せていた。 5.マーサ・ヌスバウムとアマルティア・センの「潜在能力」のアプローチ ヌスバウムは、アメリカの哲学者・倫理学者でシカゴ大学教授。センは、インドの経済学者・哲学者でハーバード大学教授である。 6.エドワード・デシとリチャード・ライアンの自己啓発的なアプローチ デシは、アメリカ・ロチェスター大学の心理学教授。ライアンは、オーストラリア・カトリック大学のポジティブ心理学教授である。
◆3度目の話し合い 「良い人生」を考えるために、様々な視点が示されている。ただし、これらには詳しく立ち入ったわけではなく、大きく全体像を見せるものだった。 先生は、話の合間に何度か「何か意見やコメントはある?」と聞き、2人の生徒がコメントしていた。 フィンランドで、生徒はそれほど活発には発言しないことが多い。しかし、グループでの話し合いは滑らかだった。 3度目のグループの話し合いでは、良い人生に必要なものを3つに減らす。 そこであげられたのは衣食住などの基本的なニーズ、安全、意義ある人間関係、自分のことを決める自由、評価・尊重されること、友達、家族などだった。こうして必要なものが絞られていった。 最後に、先生は広告とスマホの問題に戻って授業を終えた。それは、自分の欲望をつくるものは何かという問いである。 そこには、自分の選択や行動は、広告や資本主義、市場経済に誘導されているのではないかという問い、また過剰な消費に対する批判が含まれていた。 この授業はスマホを縦軸に、それをどう考えるかを横軸にし、グループの話し合いを3回挟むという密度の濃いものであり、また幅広く様々な視点を提供していることに感心した。 ※本稿は、『フィンランドの高校生が学んでいる人生を変える教養』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
岩竹美加子