『最終兵器彼女』高橋しんの現在地は箱根駅伝!かつて箱根を走った著者が、いま大学駅伝を描く理由とは?【インタビュー】
――スポーツ選手でダンスをトレーニングに取り入れる例は実際にありますよね。 高橋:今の子たちは、体育の授業でもダンスをやっていますしね。思い返すと自分のころは、いろんな身体の動きを組み合わせる「調整運動」というトレーニングをやっていて。ややこしい動きをやってからダッシュをやったりするんです。今になって、あれは脳と体の動きを結びつけるためにやっていたんだなと気づきました。あのころ目的を知って取り組んで、体の動かし方について考えることができていたらもっと効果が上がったのかも。 ――主人公たちが学んでいくことに、競技者ではなくても役立つ気づきやエネルギーを受け取れる作品だと感じます。 高橋:箱根駅伝に挑戦する過程の中で、ハヤタたちには競技力だけじゃなく生きる力を身につけてほしいと思って描いています。注目されるようなアスリートだって、一生そのスポーツだけをやって生きていくわけじゃないですよね。いろんなことを経験して、自分を表現する力など、いろんな力をつけていけるように……そういうところにつなげられたらいいな。 ――3巻の「走るのが好き。そして――ぼくらは競争が好き」という言葉に気持ちが湧き立ちました。昨今、競争という言葉が悪いイメージで語られることが多いので。順位づけされる競争を嫌うスタンスもわかりますが、スポーツには人間の根源的な喜びがあると思っています。 高橋:走る競技が嫌いな人は多いですよね。きっと体育の授業で走り方も教わらず、ただやみくもに走らされたんだと思います。 しかし、一方で市民ランナーの人口の多さにはびっくりしますよ。ぼくも『かなたかける』を描き始めてからマラソン大会に出るようになったんですけど。本気モードの人ばかりじゃない。サンダルの人もいるし、コスプレの人もいる。参加費もかかるし、つらいのにどうしてこんなに参加者がいるのか不思議ですよ。きっと、シンプルに走るのがおもしろいんだろうなと思います。 ――順位を競うばかりではなく、いろいろな楽しみ方があるんですね。 高橋:仲間と走るとかね。だから、部活で陸上をやっていた人もやめちゃわないで、楽しんで走り続けてほしいと思います。今は「ファンラン(楽しみながら走ることを目的とする)」という概念も浸透しつつあります。 ――先生は、何キロのマラソンに参加しているんですか? 高橋:コロナ前まではフルマラソンを走っていたんですよ。でも、コロナ禍の間は大会が中止になって、すっかりなまってしまって。秋には横浜マラソンの7キロランの部に参加しました。担当さんもいっしょに走ってくれました。