物理ベースAI搭載のロボットが登場、製造業に与える影響とは?
導入しやすくユーザーフレンドリーなAI
さらに同社のアドバンテージは、導入のしやすさだ。資金が潤沢にある大手企業ではなく、より財政状況が堅実な中小の製造業でも、巨額の設備投資の心配はなく、ハード・ソフトウェアの両方とサービスが含まれた年間費を支払うだけで良いとのこと。前払い金もなく、ニーズが必要な空間などを査定する専門家による見積もりも無料で提供される。 契約に至ると、企業側はGrayMatter社の本社へと招待され、ロボットのデモを確認、そこで満足いく結果であればすぐに企業のサイトへと配達し、従業員向けに操作方法の研修を1日で終わらせるという手順だ。 サイトに運ばれて稼働するロボットは、自己管理型であると同時に、年中無休のサポートシステムやサイトまでの出張サポートも提供。機械学習によってパフォーマンスは強化されるとともに、同社の専門チームが継続的なアップグレードを提供、企業の利益につながるとしている。先行投資が不要であるため、生産性の向上や従業員のウェルネス向上が短期間で可視化できるのも魅力だろう。 カビール氏は「既存の全顧客から、生産のボトルネックが解消された今、隣接装置やアプリケーションの要望を受けている。弊社には製品提供の強力なロードマップがあり、これから増加していく顧客の要求にこたえるためにも製品開発の強化だけでなく、市場戦略、オペレーション、製品、エンジニアリングの分野でチームを強化する予定」としている。今回調達した資金で、ロサンゼルス拠点のチームを強化し次世代AIロボットセルの構築をし、より多くのユースケースに活用する計画をしている。
人々の仕事を奪うと恐れられ、敵視されてきたAIや自動化ロボットは、この労働力不足が深刻な現状において不可欠であると同時に、労働者の過労や燃えつき、さらには危険な仕事への従事から救ってくれる可能性があるようだ。しかも簡単かつ気軽に、短期間で導入できるAI搭載ロボットで労働者不足を解消できるこの物理ベースAIの可能性は、人々が想像するよりもはるかに膨大で人や環境に優しい、時代に寄り添ったアプローチのようだ。
文:伊勢本ゆかり/ 編集:岡徳之(Livit)