「グリコ・森永事件の真犯人は特定されていた」…警察にキツネ目の男と疑われた男が明かす「報道されない真実」
■「キツネ目の男」=許 永中に グリコ・森永事件で「キツネ目の男」に間違われたのは、私がフェリーの事業を手掛けた後のことだ。 大淀建設はすでに新日本建設と社名を変えていた。ノミ屋や賭博はやっていない。 警察が保存している過去の資料は、いつまでたっても消えるわけではない。「色」は着いたままだ。私の場合、弱いものいじめは決してしないが、若い頃からいろいろと悪行は重ねてきた。 とにかくキタ新地には江崎勝久社長が付き合っている女性の働く店があった。そこを起点として、大阪府警は新地にぐるっと囲いを入れたのであろう。その囲いの中を地取りしていった。府警の言い分はこうだ。 「何をしているかわからん人物。いつも団体で行動している。派手な飲み方で金遣いが荒い」 グリコ・森永事件は関係ない。キタで江崎社長の女がホステスとして働いていた時期に合わせ、元同僚ホステスをはじめ、いろいろな人間に当たっていった。 そんな人物を探して聞いて回ったらしい。10人中8人が、口をそろえた。 「刑事さん、それは許永中さんですわ」 どうやら、容貌も「キツネ目の男」似だということにされてしまったらしい。 警察の捜査は、どこか一点に絞って並行に進めていくわけではない。可能性のあるところはすべて潰していく。 私も大阪府警の取り調べを受けている。警察署に呼ばれたわけではない。刑事が私のところまで話をしにやってきた。しかも、定期的にだ。 ■捜査令状のない闇の捜査の結果 ガサ入れが終わった後も、完全に「シロ」とは認めてくれなかったようだ。 何かと思えば、大阪府警がタイプライターを探しているという。グリコ・森永事件の犯人が書いた脅迫状と同じ活字を搭載している和文タイプである。刑事は「絶対に許永中のところにあるはずや」と言っているという。 大阪府警の捜査課長からはほとんど泣きが入っていた。あまりに気の毒だったので、許可は出した。 捜査令状など裁判所が出すはずもない。警察も必死だったのやろう。私物をすべてひっくり返して探したらしい。 当然のことだが、警察が「絶対にある」と睨んだタイプが見つかることはなかった。 正式な捜査令状のない闇の捜査とはいえ、ずいぶんのびのびとやってくれるものだ。警察にかかれば、勝手に思い込みで捜査が出来る。この世は本当に何でもありである。 「キツネ目の男」に顔が似ているといえば、宮崎学のほうだろう、と思わないでもない。宮崎はのちに早稲田大学時代に学生運動にあけくれ、「週刊現代」のフリー記者、家業の解体業の継承などの自らの経歴を描いた『突破者』でベストセラーとなる。