注目球児が豊富な神宮大会が閉幕。横浜高が松坂以来27年ぶりの頂点に
1997年以来27年ぶりに横浜高校が頂点に輝き、第五十五回明治神宮野球大会は幕を閉じた。松坂大輔を擁し、神宮大会、選抜高校野球、夏の甲子園、国民スポーツ大会(旧国体)の“4冠”を達成した世代以来の優勝に輝いた。
“平成の怪物”越えのスーパー1年生を支えるエースの存在
松坂世代以来の4冠が期待される横浜は、今年の夏季大会も2年生の阿部葉太選手が主将を務めたほか、決勝戦のスターティングメンバーに6名の1・2年生が名を連ね、神奈川大会で準優勝の結果を残している。早い段階で1・2年生が大舞台を経験しており、他校と比べて前評判も高かった。 特に投手力の評価が高く、今大会もエースで左腕の奥村頼人投手(2年)と右腕の織田翔希投手(1年)の2枚看板で制した。織田は、OBにあたる“平成の怪物”松坂大輔を超える逸材とも言われ、早くも26年ドラフトの上位候補として注目を浴びている。神宮大会では、3試合全試合に登板し、優勝に大きく貢献。最速151キロを誇るストレートを軸に、カーブ、スライダー、チェンジアップを織り交ぜながら相手打者を抑え込んだ。 まだ1年生ということもあり、線は細いが、冬のトレーニングを乗り越え、春にはひと回りもふた回りも成長した姿を見せてくれることに期待したい。 そんなスーパー1年生織田の活躍には、背番号1、奥村の存在が大きく関係しているだろう。2年生の春からエース番号を背負い、抜群のコントロールとキレのあるストレートを武器にチームを勝利へと導いてきた。今大会も準決勝、決勝とピンチの場面を切り抜け、チームを勢いづけたのは奥村だった。準決勝では、好投手として注目の阪下蓮(2年)を擁する東洋大姫路を相手に、得点を与えないピッチングが求められる中、先発を任され、要所を抑えるピッチングで5回無失点と1点のリードを保った。その後、織田にマウンドを託したが、8回裏に東洋大姫路が粘りを見せ1点を失い、タイブレークにもつれた。 無死1、2塁から始まるタイブレークでは、先発からレフトの守備に就いていた奥村が再びマウンドに上がった。横浜は、延長10回、1死満塁一打サヨナラの場面で「内野5人シフト」の奇策に出た。投手としては絶対に三振が欲しい状況の中、3球で追い込み、最後はこの日最速144キロのストレートで空振り三振を奪取。後続も抑え、大ピンチを切り抜け、11回表に味方が2点を取り、決勝進出を決めた。 また、決勝戦でも4―2と2点リードの9回、1死2、3塁と一打同点のピンチで登板。内野ゴロの間に1点差に迫られるも最後の打者を三振に抑え、好救援で優勝に導いた。 先述の通り、織田の活躍もあり、今大会は7回2/3の登板に留まったが、奥村の活躍なしには27年ぶりの優勝はなかっただろう。 決勝戦後の村田監督のインタビューでも「奥村が織田に何かあったらいくぞという準備をしてくれていたからこそ、なんとか守り切ることができた」とコメントを残している。さらに、最後の奥村の投球についても「本当に価値ある1球を投げてくれた」と評価した。 頼りになるエースが後ろで控えているからこそ、織田の思い切ったピッチングも生まれている。冬を越えて、両投手がさらなる進化を遂げ、松坂世代以来の4冠を達成できるか注目だ。