「今日のウクライナはあすの東アジアかも」岸田首相会見2月24日(全文1)
今後も切れ目なくウクライナを支える
残念ながら、現時点ではロシアによる侵略行為との、戦いの終わりは見えていません。そうした厳しい現実を前にウクライナが最も必要としているものは、ロシアと戦う装備品です。日本は防衛装備移転三原則に従い、防弾チョッキやヘルメット、ドローン等をウクライナに供与してきましたが、殺傷性のある装備品は提供することには制約があります。しかし、だからこそ日本は、日本の強みを生かしウクライナの人たちに寄り添った支援をきめ細かく実施してきています。 侵略直後からこれまでに約9億ドルの人道・復旧・復興支援と、先般追加表明した約55億ドルの財政支援を含め、計71億ドルのウクライナ関連支援を表明してきました。今後も日本ならではの形で、切れ目なくウクライナを支えていきます。 具体的には、まずロシアによるエネルギーインフラ等への攻撃が継続する中、ウクライナの電力不足への国際的対応が求められています。わが国は米国と連携し、エネルギー分野支援に関するG7+の枠組みでの協力を主導していきます。例えば、日本が進めてきている約1500台の発電機の供与は、数十万人のウクライナの人々に厳しい寒さの中で暖を提供しています。また、より広範な人々が裨益するよう、10機程度の大型の変圧施設や、約140台の電力関連機材の供与を進めていきます。 戦闘が終わったまちでは、地雷や不発弾を除去して安全を確保し、復旧・復興を進めることが重要です。日本にはカンボジア等での地雷除去や復興協力の長年の経験があります。そこで得た知見を活用しつつ、日本の協力により経験を積んだカンボジアと共に、ウクライナに対し地雷探知機の使用方法に関する研修を開始しました。
地雷探知機や地雷除去機の供与を進める
ウクライナが一刻も早く地雷除去を本格的に進められるよう、研修を継続するとともに、地雷探知機や地雷除去機の供与を進めていきます。また、復旧・復興の前提となるがれき処理のため、建機等の供与も進めていきます。 ロシアによる侵略が始まる前、ウクライナは世界有数の穀倉地帯として、世界各地に農作物を供給していました。ロシアの暴挙でその供給が阻害されたことにより、国際的な食料危機が発生しています。日本はこれまでもウクライナにおける穀物の貯蔵能力の拡大支援や、影響を受けている地域向けの食料支援を実施してきました。 しかし、ウクライナが再び世界の食料庫として穀物を世界に供給できるよう支援していくことこそが重要です。その観点から、ウクライナ産のトウモロコシ等の種子を調達し、女性、若者、零細農家を優先して供与することによって、ウクライナの農業生産能力の回復を支援することも準備しています。ウクライナの農業生産、輸出能力を回復させる取り組みは、グローバルサウスとの関係でも重要であり、今後とも日本ならではの支援を拡充していく考えです。加えて、教育やガバナンス強化、文化財保護等、ウクライナのニーズに応じた日本ならではの知見を生かした、多岐にわたる支援を実施していきます。 また、ロシアによる暴挙の影響を受けているウクライナの周辺国を支えていくことも重要です。多くの避難民の流入や、エネルギー価格の高騰などの困難に直面しているポーランドやモルドバなど、周辺国に対する円借款の供与などを実施していきています。 今日のウクライナはあすの東アジアかもしれない。私は強い危機感を持って、強力な対ロ制裁とウクライナ支援を実施してきました。そしてG7、G20、東アジアサミット、ASEAN首脳会議、さまざまな会議や首脳会談で強く訴えてきました。侵略を受けているウクライナを支えることは、ウクライナへの支援であると同時に、力による一方的な現状変更を認めず、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くとのわれわれの決意を行動で示していくことです。 世界が歴史的転換点にある今、日本独自の立ち位置を生かして外交力を発揮する、さらに有志国と連携して次の平和秩序づくりに貢献をしていく。5月のG7広島サミット、9月のインドG20、11月の米国APEC、年末の日本でのASEANとの特別首脳会合など、本年はインド太平洋地域で重要な国際会議が次々と開かれます。国際社会の平和と安定を取り戻すべく、このアジアから世界に信頼される日本の外交力を大いに発揮するよう、最大限努力いたします。