「膀胱全摘を決意できず、2年間遠回りした」小倉智昭が自身のがん経験を赤裸々に発信する理由
2021年3月まで22年間にわたり、朝の情報番組「とくダネ!」(フジテレビ)のメインキャスターを務めた小倉智昭さん。第一線で活躍していた2016年に膀胱(ぼうこう)がんと診断され、2018年には膀胱の全摘手術を経験。現在も治療をしながら仕事を続けている。告知された時には男性機能を失うことに未練があり、膀胱全摘をなかなか決断できず、一時は民間療法に頼るなど「2年は遠回りした」と語る小倉さん。術後は尿漏れに悩まされ日常生活にも苦労があるそうだが、こうして自らの体験を赤裸々に発信するのはなぜか、その理由を聞いた。(聞き手:荻上チキ/TBSラジオ/Yahoo!ニュース Voice)
膀胱の全摘をなかなか決断できず、遠回りした2年間
ーー最初にがんが発覚したのはいつ頃だったのですか? 小倉智昭: 2016年だったと思います。もともと糖尿病を40年以上患っているので、普段からお小水に何か混ざっていないか気にしていました。ある日、唐辛子の赤い粉のようなものが混ざっていたことがあって、その後何度か同じことがあったんですね。「これはひょっとしたら危ないぞ」と思って、尿の細胞診検査をしたら、5段階評価のうちレベル4と診断されて。専門の病院で膀胱鏡検査をして「ダメですね。内視鏡手術をしましょう」と言われたのが始まりです。 その後、仕事が一段落したタイミングで手術をしてもらったのですが、手術後に先生から「粘膜がんではなく、筋肉層まで食い込んでいる浸潤がんで、状態がかなり悪いからなるべく早く膀胱を全摘してください」って言われたんですよ。 ーー膀胱を全摘することは、すぐに決断できたのですか? 小倉智昭: すぐには決断できませんでしたね。膀胱の全摘というのは、精巣や勃起神経、前立腺など周りのものも取ることになってしまう。やっぱり男として未練がましいところがあったので「ちょっと考えさせてください」と言って、インターネットや本でいろいろなことを調べました。本の中には「がんは切らずに治る」とか民間療法を紹介するものも多かったです。それらを片っ端から読んで、新しい抗がん剤を取り寄せたり、がんを活性化させない治療などに飛びつきましたね。 ーーやはり代替療法や民間療法に頼りたくなるものなのでしょうか? 小倉智昭: やっぱり少しでも長生きをしたいと思うので、他に何か良い方法はないかと自分でいろいろと情報を集めちゃう。すると「〇〇を飲んだらがんが消えました」とか「こんな治療をして長生きをしています」とか、さまざまな例が出てくるんです。 ただ、振り返ってみると、遠回りしたなと思います。もちろんセカンドオピニオンは重要ですが、どの先生も「これは早く取ったほうが良い」とおっしゃっていましたから。 結局2年間悩んでいるうちに、中にできたポリープが弾けて大出血を起こし、即入院する事態になりました。先生からは「症状が重いから、すぐに取らないと大変なことになる」って言われましてね。結局、あきらめざるを得ない状態になって全摘をしました。