しまむらスリッパ「ぴた、さら」で中毒者続出 100万足超えのワケ
「よくある、通気性が良さげなスリッパ」ではなかった――。ファッションセンターしまむらのプライベートブランド(PB)で展開している「FIBER DRY(ファイバードライ)」のラインアップに並ぶ夏の主力スリッパ「FIBER DRYさらっとドライスリッパ」の話だ。2023年にミリオンセラーの仲間入りを果たし、24年は130万足の販売を見込むが、発売当初は年間20万足ほどしか売れなかったという。履けばなるほどと、その良さに膝を打つ大人気アイテムはどうして“覚醒”したのか。 【関連画像】販売価格は税込み539円。「よくある、通気性が良さげなスリッパ」に見えるが・・・・・・ FIBER DRYは、吸水速乾を基本機能に備えたしまむらグループ独自の高機能素材商品。PB「CLOSSHI(クロッシー)」「CLOSSHI PREMIUM(クロッシープレミアム)」で展開し、現在は肌着やパジャマ、帽子、スリッパなどをそろえる。スリッパが登場したのは2017年で、23年は実質9カ月の販売期間で100万足を売り上げた。 ただ、「発売からの3年は、販売数量が年間20万足程度の埋もれた存在だった」と、しまむら商品7部長の柳澤一秀氏は振り返る。状況が大きく変わったのは20年。それまでの2倍増となる40万足以上を売り上げ、翌21年は60万足、さらに次の22年は80万足を記録。そして23年にはついに100万足へ到達した。24年は当初目標の110万足を上方修正し、130万足になる見込みだという。 鳴かず飛ばずだったスリッパが、売り上げをここまで大きく伸ばすようになったのはなぜか。実は20年モデルの開発前、「FIBER DRYさらっとドライスリッパ」はリブランディングを断行している。「それまではPB比率の引き上げを達成するため、商品数の増加が主眼になり、結果としてブランドコンセプトが曖昧になっていた」とは柳澤氏の弁。 リブランディング前のスリッパは、インソール(中敷き)にメッシュ素材を採用するにとどまり、他社商品との差別化が弱かった。言葉を選ばずに言えば、「よくある、通気性が良さげなスリッパ」だ。 その状況を改善するためのリブランディングでは、触り心地や使い心地の見直しに着手。例えばユニクロと聞けば、多くの消費者が「エアリズム」や「ヒートテック」を想像する。しまむらも、「FIBER DRY」の名前を真っ先に思い浮かべてもらう状況を目指した。取締役の高橋維一郎氏は、「中でもスリッパは私がバイヤー時代に担当していたため、特別な思い入れもあった」と打ち明ける。