しまむらスリッパ「ぴた、さら」で中毒者続出 100万足超えのワケ
検索数が少ない言葉に勝機あり
タイミングも良かった。同社の市場調査部が新たな分析手法を導入し、現状分析→商品開発→モニタリング→商品化というスキームが確立していた。その結果、“ただのメッシュスリッパ”は大きく生まれ変わった。 その商品特徴を説明する前に、同社の市場調査部が分析に取り入れた方法に触れておく。LINEヤフーの専門ツール「DS.INSIGHT(ディーエスインサイト)」を使い、検索エンジンで「スリッパ」と合わせて入力しているキーワードをヒントにした。 検索エンジンへの入力ワードは、他人に見られるSNS投稿と異なる言葉が入ってくる。ポイントは、検索ランキングの上位以外に着目した点だ。 「検索ボリュームが小さい分、世の中に広く顕在化していないニーズを把握できる可能性がある。そうしたワード同士のつながりや背景にあるスリッパの着用シーンを推測。人工知能(AI)分析も参考にしながら、様々な仮説を立てた」(しまむら市場調査部長の坂本祐希氏) ●その通気性は本物か? この新たな分析手法によって仮説として浮かび上がったのが、「脱げないスリッパ」に対するニーズと、自社製も含めて世の中にある「高い通気性を売りにするスリッパ」に対する不満だった。 「階段を上り下りする際、スリッパが脱げそうになる」「椅子やソファに座っている間は、スリッパをつい脱いでいる」。そうした状況があるとしたら、販売している自社のスリッパはきちんと応えられているのか。 その疑問を解決するため、市場調査部が社内でモニタリングを実施。「脱げやすいか」「足を入れにくくないか」「足が蒸れる問題はメッシュ素材の採用だけで払拭できているのか」。このように細かな質問を用意し、本社や店舗の社員に10段階で評価してもらった。 そうして開発したのが、程よいフィット感があるインソール、ホールド感を持たせた甲部分、そして通気孔をつけたアウトソールを特徴とする現在の新生スリッパだ。インソールは立体メッシュで、履いてみると足裏の設置面が少ないためさらりとした足触りだ。踏むたびに足裏の空気がアウトソールへ抜けるため通気性がいい。適度なホールド感があり、意図せずに脱げることはなかった。