16歳で抱かれた既婚女性と別れられない…アラフォー男性が落ちた、甘く悪い恋
悪い恋ほど燃え上がるのはいったいなんで?
太郎は過去に何人かの女性とつきあった経験がありますが、最終的には怜の元へ戻るというループを繰り返しています。しかも「僕が欲しいのはあなただけだ」と、冷めるどころか想いはますます深まるばかり……。 前述の通り、悪いとわかっている恋をやめられないのは仕方がない。でも、一般的に考えても悪い恋ほど夢中になったり盛り上がったりしてしまう傾向にあるように感じます。それには理由があるのでしょうか。 黒川:これもちゃんと理由があります。悪い恋のほうが燃えるのは、そのほうが遺伝子のバリエーションを豊かにできるから。 生物は、遺伝子が多様なほど有利です。 たとえば、寒さに強い個体と暑さに強い個体をかけ合わせれば、地球が温暖化しようと寒冷化しようと、子孫が滅亡しないでしょう? また、生殖のペアとしても感性が真逆の2人は理想的。 とっさに見る場所が違い、感じることが違うので、気づきの数が圧倒的に多くなり、2人とその子どもの生存可能性が跳ね上がるからです。 黒川:動物は、免疫のタイプや感性のタイプが違う相手により強く発情する傾向があります。したがって、自分が育った社会にいないタイプの人間に強く惹かれてしまうんです。 自分が所属する社会で悪いとされている“アウトロー”と呼ばれる存在は、その最たる相手となります。誠実な人が不誠実な人に、几帳面な人がだらしない人に惚れるのは、ある意味で自然の摂理なのでしょうね。 たしかに本作でも、おっとりした太郎と、恋愛でも家庭でも主導権を握る怜は真逆のキャラクターとして映ります。また、詳しくはコミックスを読んでいただきたいのですが、彼女の浮気相手は太郎だけじゃありません。少なからず、恋愛面においてアウトローであるとも言える怜。……ですが、そんな彼女の奔放さこそが理性的な太郎を惹きつけて離さない理由の1つといえそうです。
周囲が反対する恋はむしろ“良い恋”!?
ここまで読んで「太郎よ、あなたにはもっと素敵な人がいるはず……!」と思う方もいらっしゃるでしょう。また、「そんな恋はやめたほうがいいよ」と意見したくなる方もいるかもしれません。でも、果たして周囲の反対は意味があるのでしょうか。 黒川:まず周囲から強く反対される関係であるということは、それだけ「珍しい遺伝子組合せ」である可能性が高いです。反対されるほど燃えあがるのも、「遺伝子バリエーション」を求める脳の戦略のうちの1つだと思います。 そのため、年齢差や立場の違いなど、一般に不釣合と言われる2人もいったん惹かれ合えば、強い結びつきになりやすいと言えるでしょう。 なんということでしょう……。 周囲の反対がある恋ほど、脳科学の観点からみれば“良い恋”とも言えるのです。こんなにも好相性ならば、いっそのこと「太郎頑張れ!」と言いたくなる方もいるかもしれません……が、やはり問題はこの恋が日本においては“非合法”かもしれない恋であるということ。 不倫は犯罪には該当しないため、刑事上の処罰はありません。ただし民法709条にある通り、慰謝料という形で民事上の責任を問われる行為。憲法のプロフェッショナルである太郎ならば、このことは痛いほどわかっているはず。 彼は、甘く悪い恋から抜け出すのか、はたまたこのまま突き進むのかーーハイスペックなイケメン教授が溺れてしまったロマンスの行方は、ぜひコミックスでお楽しみください!
プロフィール
黒川伊保子 株式会社感性リサーチ 代表取締役社長/人工知能研究者/感性アナリスト/随筆家 長野県生まれ、奈良女子大学理学部物理学科卒。コンピュータ・メーカーにてAI(人工知能)開発にエンジニアとして携わる。感性研究の見地から「脳の気分」 を読み解く感性アナリストとして多方面で活躍。主な著書は『夫のトリセツ』(講談社+α新書)、『家族脳』(新潮文庫)、『女の機嫌の直し方』(インターナショナル新書)など多数。また2018年に発売された著書『妻のトリセツ』はベストセラーに。
FRaU マンガ部/松田 奈緒子