編集者・岡本仁の旅先コーヒー案内。【大阪・神戸編】
東京で長く生活していると東京全体の位置関係、どっちが東にあるとか西にあるとかが、大まかに頭に入っているし、地下鉄やJRの路線図もだいたい記憶している。もしそれがないと、大きな街を歩くのはひと苦労だろう。 好きなコーヒー店が見つかれば歩くのがさらに楽しい。 ぼくは大阪へ何度も行っているのに、どうも全体像を掴めない時期が長く続いていた。キタやミナミがどこらへんを指すのかもわからない。でも、もちろんいまだって見えているわけではないのだが、この辺りなら地図なしでも歩けるとか、迷っても何とかなると思えるようになった最初のエリアは北船場のあたりだった。 いちばん北が「大阪市立東洋陶磁美術館」で、いちばん南が『Udon Kyutaro』。このふたつに挟まれたエリアをひとつにしていいのかどうか自信はないが、うろうろする時になくてはならないのが『平岡珈琲店』で、ドーナツを食べながらコーヒーを飲むと、もう少し歩いてみようという気分になる。歩くと面白い建物や店が見つかるので楽しい。コーヒー店が東洋医学で言うところのツボで、そこを押さえると、いろいろな場所に血が流れていくかのごとく、この通りを真っ直ぐ行ってみようと歩き出す。歩いていて嬉しかったのは、ぼくの大好きな『出入橋きんつば屋』の暖簾分けした店が見つかったことだ。やはりコーヒーブレイクは大切なのである。
平岡珈琲店
大阪市中央区瓦町 ここのドーナツが美味しいと教えてもらって行った店。そのドーナツは、先に知っていた京都の『六曜社』に似た味わいで、それ以来、必ず頼む。長く歩いて少し疲れた時に、このじんわりとした抑えめの甘さが、とても嬉しい。それにしても、この店があるエリアは本当に魅力的だと感じる。
最近、このエリアのさらに北にある天満橋エリアをよく歩くようになったのも、やはり『ロングウォーク』という店を教えてもらったからだ。それまでは、目的の場所に行ったらすぐに引き返すというようなパターンばかりだったエリアに、やはり気に入ったコーヒー店ができると、他にもいいものが見つかるかもしれないと、付近を歩き始めるのである。そうしたら自然派ワインのバーが見つかった。