「生まれて0秒で殺される子」を減らしたい…伊藤孝恵が「子どもの幸福度」が低い日本を変えるために考えたこと
生まれて0秒で殺される子どもを減らしたい
――最後に毎回ゲストの方にお伺いしているんですけども、内閣総理大臣になったとしたらやりたいことは何でしょうか? 伊藤:政治家は必ずしも総理大臣にならなくていいとは思いますが、私のやりたいことはシンプルです。「子どもが幸せな国にする」。日本って、身体的な健康においてはユニセフの調べ(ユニセフ報告書「レポートカード16」2020年)で世界1位なんですが、精神的な幸福度は38カ国中37位なんです。身体的には幸せなのに、精神的には幸せじゃないって何なんでしょうね? この国の一番の課題は少子化、つまり子供が生まれないことじゃないですよ。生まれた子どもたちが、去年で言えば513人も小中高生が自ら命を絶つ(※)という状況が一番の課題です。だから、子どもの幸福に連なる政策を目一杯やる総理になります。 ※編集部注:警察庁の自殺統計に基づく厚生労働省のまとめより、 ――伊藤さんが内密出産の法整備についても一生懸命やられているのを記事で拝見しました。病院が母親の代理で出生届を出すことはできるけれど、病院側が母親の名前を知りながらそれを空欄にして提出すると、刑法第157条「公正証書原本不実記載罪」に抵触する可能性がある。赤ちゃんポストを設置している熊本の慈恵病院で国内初の内密出産が2021年に行われましたが、病院はリスクを負いながら、いろいろな事情を抱えた女性を守っている。政治的にどうにかしないといけない問題ですよね。 伊藤:この国で虐待で亡くなる子どものうち一番多いのはゼロ歳児です(こども家庭庁の22年度の検証より)。その中でも、0カ月0日0時間0秒、つまり産声をふさがれて亡くなる子どもたちが一番多いことは、あまり知られていない。 想像してみてください。私たち女性は身を引き裂いて子どもを産みます。子どもを産んだその身の両太ももで、子の首を絞め上げて殺すという宇宙一悲しいお母さんたちが、この国にはいるんです。そんな土砂降りの雨の中にいる人たちに傘を差し出す法律があってもいいじゃないですか。なので、2018年から私は取り組んでいます。 慈恵病院の赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」を運営されている蓮田先生によると、ゆりかごに預けられた子どもたちの半分以上はへその緒がついたままなんだそうです。では、この子たちはどこで生まれたのか。 自宅のお風呂なのか、 それともショッピングセンターのトイレか――。命がけで産むお母さんたちには医療的介助が必要で、せっかく生まれた子どもたちには生きる権利があるんです。 生きて、特別養子縁組につながって、幸せになれるかもしれない。そんな幸せを作る人たちが、内密出産に踏み切った時に罪に問われるかもしれない。そんなのはたまらないので、2022年2月の参議院予算委員会で蓮田先生を参考人として招き、内密出産の実態について語っていただきました。そして答弁の中で、内密出産は日本の法制下では違法ではないということを時の総理(岸田文雄議員)から、法務大臣、厚労大臣からお答えいただいた。 でも、ここで終わりじゃないんです。内密出産に関する法整備、そしてそもそも内密出産に至るまでの課題はまだ解決されていない。来年度出せるように今、法案を書いてます。
たかまつ なな(時事YouTuber/株式会社笑下村塾 代表取締役)