『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』が映画界の残したものとは?【前編】
マット・デイモン(1970年生まれ)とベン・アフレック(1972年生まれ)。言うまでもなく現代の映画界を代表する大スターのふたりだが、彼らはもともと幼なじみであり、激アツの友情を長年継続させているハリウッドきっての仲良しコンビとして良く知られている。 ふたりが知り合ったのはデイモンが10歳、アフレックが8歳の時。デイモンの地元である米マサチューセッツ州ケンブリッジに、アフレック一家が引っ越してきて、たまたまご近所同士になったのだ。まさに運命の出会い(もちろんベンの3歳年下の弟、俳優のケイシー・アフレックも当時からの仲ってことになる)。そしてハイスクールの頃から映画業界での成功を目指しはじめた彼ら(一応、ベン・アフレックは以前から子役として活動していた)は、俳優のオーディション費用を貯めるために共通の銀行口座を開いて互いをサポート。まるで常にギャラを折半する漫才コンビのようである。初めてデイモン&アフレックが一緒に出演した映画はケヴィン・コスナー主演の『フィールド・オブ・ドリームス』(1989年/監督:フィル・アルデン・ロビンソン)だが、これはノンクレジットのエキストラ出演。やがて共にブレイクを果たしてからは共同で会社を設立しており、最初は2000年に立ち上げたライヴ・プラネット。次は2012年にワーナー傘下のパール・ストリート・フィルムズを設立するが、2022年11月にはその後継となる独立系の製作会社アーティスツ・エクイティに移行。同社の企画・製作の第1弾となった2023年公開の『AIR/エア』はデイモンが主演、CEOのアフレックが監督を務めた。 どんなおしどり夫婦よりもベストパートナーの名にふさわしい大親友同士。そんなふたりが夢多き新人時代にがっつりタッグを組んで放った共通の出世作――Wスターの華麗なキャリアを決定づける美しいツメアトになったのが、1997年の名作『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(監督:ガス・ヴァン・サント)だ。 この映画はマット・デイモンが名門ハーバード大学在学中の1992年、授業の課題で書いた40ページの戯曲が最初のベースになっている。まもなくデイモンは大学を中退することになるのだが、そのあとロサンゼルスに住んでいたベン・アフレックのアパートに転がり込み、ふたりは映画やテレビドラマの端役の仕事をこなしながら2年の歳月を費やし共同で脚本を仕上げていった。これが結果的に1998年3月、第70回アカデミー賞の脚本賞を見事に受賞することになるのである。 物語の主人公はマット・デイモン演じる孤児の青年ウィル・ハンティング。貧困と虐待にまみれた恵まれない家庭環境の中で育った彼は、繊細かつ素行の悪い問題児であり、これまで何度も鑑別所入りを繰り返してきた。しかし実は桁外れの天才的な頭脳の持ち主。普段ツルんでいるガラの悪い不良仲間たちも、内心「ヤツは俺たちとは違う」と感じている。特にウィルと仲の良い悪友がアイルランド系のチャッキーで、チャラいが情に厚いこの彼をベン・アフレックが演じている。舞台となるのは実際にデイモン&アフレックが少年時代を過ごしたボストンの街だ。 続きは中編へ
文=森直人 text:Naoto Mori