「よりよいものをより安く」はもう限界…衰退する日本企業の「最大の欠点」
この国の人口はどこまで減っていくのだろうか。今年1年間の出生数が70万人割れになるかもしれず、大きな話題となっている。 【写真】日本人は「絶滅」するのか…2030年に百貨店や銀行が消える「未来」 そんな衝撃的な現実を前にしてもなお、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。 ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。 ※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。
「薄利多売」から「厚利少売」へのシフト
「戦略的に縮む」という経営モデルにシフトしたならば、次は「残す」ことにした事業がこれまで以上に成果を出せるようにしなければならない。 そこで求められるのが、製品やサービスの高付加価値化だ。これは「戦略的に縮む」という成長モデルを成功させるための1つ目の大きな柱である。 マーケットが縮小する以上、GDPや売上高が減るのは仕方ない。それをカバーするには、製品やサービス1つあたりの収益性を高めることだ。「薄利多売」から「厚利少売」(販売する商品数を少なく抑える分、利益率を大きくして利益を増やすビジネスモデル)へのシフトである。現状においても、販売数を拡大して売上高を伸ばしたところで、利益が増えなければ意味がない。 もちろん「厚利多売」が理想である。一気に人口が減るわけではないので当分、厚利多売を続けられる大企業などは残るだろう。だが、それも時間の問題だ。企業規模の大きさにかかわらず厚利少売で成り立つビジネスモデルを手に入れざるを得なくなる。 厚利少売は、高くても消費者が買いたくなる商品やサービスを生み出すことが必須である。スマートフォンを考えてみればよい。決して安い買い物ではないが、その利便性が受け入れられ今では多くの人が所有するようになった。消費者は「不可欠だ」と判断すれば、高くても購入する。 米国の自動車会社テスラ1台あたりの利益は他社を圧倒している。為替レートもあるので単純に比較できないが、2022年7~9月期決算を見ると、販売台数はトヨタ自動車の8分の1ほどなのに純利益はほぼ同じだ。フォルクスワーゲングループの資料によれば2021年のアウディの販売台数は168万512台で営業利益は55億ユーロである。これに対してポルシェは30万1915台で53億ユーロだ。ポルシェ1台でアウディ5・4台売ったのと同じ計算だ。 ヨーロッパには洋服や化粧品、カバンといったブランド品を製造する企業が多いがこれらも「厚利少売」の好例だ。企業規模をいたずらに拡大するのではなく、自分たちの生産能力の中で「こだわりの品」を作りあげ、利益率の高い商品として維持、提供し続けているのである。