「感染させる人の約半数は無症状。若い人はリアリティを知ってほしい」 尾身会長の緊急メッセージ
感染拡大が止まらない。東京都では31日の新型コロナウイルスの新規感染者が1300人を超え、全国的にも高止まりしている。医療体制が崩れるなど、危機的な状況も懸念されている。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、若者への緊急のメッセージとして「このウイルスは誰でも感染するし、感染させる可能性もあることを知ってほしい」と発した。(ノンフィクション作家・河合香織/Yahoo!ニュース 特集編集部)
感染を抑えられなかった「勝負の3週間」
──11月25日に政府が「この3週間が勝負」と訴えましたが、感染拡大が止まりません。 4月の緊急事態宣言の頃より、私は今のほうが強い危機感を持っています。このままではみなさんが空気のように当たり前のように感じてきたかもしれない、質の高い日本の医療が維持できなくなってしまう。医療体制が崩れると、社会の根幹が崩れてしまうことになりかねない。さらに、職を失う人も増えるかもしれません。
──政府の緊急事態宣言を再び求める声も高まっています。 いま緊急事態宣言を出しても、4月頃に比べて国や自治体の協力を得ることが難しくなっています。必ずしも、前と同じ効果が得られるかどうかはわからないと思います。4月の時点では、宣言を出すという行為そのものが、人々の行動を大きく抑制する効果があった。感染防御のため、みんなが協力して自分の仕事を休むなどしてくれた。だが、いま2度目の緊急事態宣言を出しても、あのときのような協力が得られる確証は今のところありません。 感染を抑えるために必要な対策についてリアリティをもって分析し、いま何が求められているかという中身を議論しなければならない。対策は、人々の協力が得られるものでないと意味がないと思います。
──効果的な対策は何でしょうか。 ウイルスの性質について、今はわかってきたことが多い。その知見からすれば、一律にすべての国民に自粛を要請するのではなく、リスクの高いところに重点的に対策を強化すべきです。つまり急所を押さえることです。 飲食店が感染の要素になるということは、膨大なデータから明らかになりました。以前のように夜の街だけではなく、昼間のレストランなどでも、マスクを外しての会話で感染の場となり得ることが明らかになった。時間や場所、お酒の有無にかかわらず、食事の場は感染のリスクが高いわけです。 ──だから、感染を抑制するには飲食店に行くのを控えなくてはいけないのでしょうか。 確かにそうです。ただし、飲食店側からすれば、協力したくても経営上難しい面があることはよくわかります。であれば、今まで以上に強力に経済的支援を行うべきだと思います。感染症で亡くなる人も、失業や休業で困窮する人も同じ命です。