「感染させる人の約半数は無症状。若い人はリアリティを知ってほしい」 尾身会長の緊急メッセージ
しっかり経済的支援をするというメッセージを
──営業時間の短縮要請やそれに応じた店への協力金を支援するなど、新型コロナウイルス特措法改正の議論もあります。 事業者に国が十分な協力金を手当てできる法律を制定する計画があるのなら、なるべく早く実行してもらいたい。それにより、しっかりと経済的支援をする強い意志が国にあるというメッセージが国民に伝わると、多くの事業者の協力が得られるのではないかと思います。これは政治の役割だと思います。
──5人以上の会食を控えるように政府は呼びかけていたにもかかわらず、政治家が多数で会食している報道が相次ぎました。 議員が自ら大勢の会食をしていては、いろいろ我慢している市民はついていけないでしょう。もちろん議員の行動で感染拡大が起きたわけではありません。ですが、選挙で選ばれた人たちが宴会をがんがんやっていれば、市民はそれを大人数で会食してもいいんじゃないかというメッセージとして受け取るでしょう。
約半数が無症状。誰でも感染させる可能性がある
──10代、20代などの比較的若い世代が感染を広めているという指摘があります。事実でしょうか。 はい、そういう傾向があります。しかし、私が強調したいのは、若い世代に責任がないことです。これはウイルスの特徴によるものです。若い人は感染してもほとんどが無症状で重症化しない。その結果、知らないうちに感染が広まっています。 ただし、若い人にはこうしたリアリティも知ってほしい。このウイルスは他の人に感染させる人の約半数が無症状です。知らないうちに家庭内に伝播し、家庭内の高齢者が高齢者施設に行くと、そこには基礎疾患のある人も多くいる。そうなると重症化する方が増え、結果的に医療の負担が減ることはない。
今はみんなが協力して、感染レベルを下げることが重要です。若い人たちには、自分たちの行動が苦境の日本を救う、おじいちゃんおばあちゃんを救うということを、ぜひ知っていただければと思います。
──社会のために行動を変えて欲しいということですね。 私自身の若い頃を思い出しても、自分のことで精一杯。せいぜい考えるのは自分の家族や恋人のことでした。だから、それを求めるのは難しいことだというのは、よく理解しているつもりです。しかし一方で、日本の若い人も災害が起きれば、大勢が自発的にボランティアに行くわけですよね。誰かから強制されたわけでもなく、自ら困っている人を助けたいという気持ちもあるのではないか。それは責任感や道徳観や義務感ではない、もっと自然な思いかもしれませんね。 もちろん、すべての自由を諦める必要はありません。自分の人生を楽しみながらも、少しそういったリアリティに心を馳せてほしい。それだけで感染状況は変わってくると思います。