フリーランスの方に「青色申告はメリットばかりだよ」と言われましたが、デメリットはまったくないのでしょうか?
日本の所得税制度は、納税者本人が納税額を正しく計算して納税する申告納税制度です。一定の水準の記帳をして正しく申告をする方には、有利な取り扱いが受けられる制度があります。それが青色申告制度です。
青色申告とは
青色申告のできる方は、不動産所得、事業者所得、山林所得がある個人事業主の方に限定されています。「富士山は青色(不事山は青色)」と覚えるとよいでしょう。 また、申告の方法は青色申告と白色申告の2種類がありますが、青色申告は白色申告に比べて、青色申告特別控除が受けられることや、青色専従者給与を必要経費に算入できるなど、いくつかの特典があります。これらを上手に利用することで、節税が可能です。
青色申告のメリット
<メリット1. 青色申告特別控除> 所得金額から最高55万円(電子帳簿保存またはe-Taxを使う場合は65万円となります)、または10万円を差し引くことができます。 その中でも、55万円の青色申告特別控除を受けられる方は、次の要件をすべて満たしていることが必要です ●不動産所得(事業的規模(※))または事業所得があること(山林所得は対象外となります) (※) 不動産所得(事業的規模)とは、家屋の賃貸の場合はおおむね5棟以上、アパートなどの賃貸の場合はおおむね10室以上の場合等、事業的規模を満たしていること(5棟10室基準) ●正規の簿記の原則(複式簿記)にしたがって帳簿付けをしていること ●貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付していること ●申告期限内に確定申告をすること <メリット2. 青色事業専従者給与の必要経費算入> 青色申告者の事業にもっぱら従事している生計を一にしている配偶者や、その他の親族に支払った給与は、原則として必要経費に算入できます。 <メリット3. 純損失の繰り越し控除> 事業所得などに損失(赤字)の金額があるケースで、損益通算の規定を適用後も控除しきれない部分の金額(純損失の金額)が生じたときには、翌年以後3年間にわたりその損失額を繰り越して、各年分の所得金額から控除できます。 <メリット4. 純損失の繰戻還付> 前年も青色申告をしている場合は、純損失の繰り越しに代えて、損失額を生じた年の前年に繰り戻し、前年分の所得税の還付を受けることも可能です。 <メリット5. 貸倒引当金> 未回収となりそうな見込額の金額を計算して、その分を本年度の所得から減らすことが可能となる制度です。貸金の貸倒れによる損失の見込額として、年末における貸金の帳簿価額の合計額の5.5%以下の金額を貸倒引当金勘定へ繰り入れたときは、その金額を必要経費として認めるものです。無事に代金が回収された場合は、次年度の決算時に貸倒引当金の戻入処理を行い、所得に加えます。 <メリット6. 減価償却の特例> 白色申告の場合は、取得価格が10万円以上の固定資産等は減価償却(※)が必要ですが(*)、青色申告の場合は、取得価格が30万円未満の固定資産等であれば、減価償却することなく、取得した年に一括で経費に計上できます(年間合計300万円まで)。 (*)ただし、10万円以上20万円未満の減価償却資産は、一般的な減価償却ではなく、取得価額の合計額を3年間で均等償却できる、一括償却資産という制度を利用することもできます (※ )減価償却とは、取得価格が10万円以上の固定資産などを取得した場合は、その取得価格を一括で経費にせず、何年かに分けて経費にしていくことです。 <メリット7. 棚卸資産の低価法による評価の選択> 期末に販売商品などが残っている場合には、商品の棚卸しを行う必要があります。青色申告の場合は、低価法により期末商品の価格を計算することができます(事前に税務署へ届出手続きを行う必要があります)。 商品の棚卸しでは、一般的には原価法(最終仕入を原価で計算)で期末商品の価格を計算します。しかし、低価法を適用した場合、原価と時価を比較し低い価格で期末商品の価格を計算できます。低価法で計算することで売上原価が高くなり、利益を抑えることができます。 <メリット8. その他> 青色申告で所得税が少なることによって、住民税も軽減され、社会保険料(国民健康保険料や公的介護保険料等)も軽減されることになります。