〈プーチンのミサイル攻撃の“限界”〉ちらつく核使用の可能性も、立ち止まらせる見返りと反動への計算
フィナンシャル・タイムズ紙は、11月22日付けで、米国がウクライナに供与した長射程兵器のロシア領内への使用を認めたことへの対応として、ロシアが新型の弾道ミサイルでウクライナへ攻撃を行ったことについての論説‘Vladimir Putin climbs escalatory ladder with missile experiment’を掲載している。概要は次の通り。 2022年2月のウクライナへの全面侵攻以来、ロシアは西側諸国がウクライナに対して高性能の兵器を供与することを報復と戦争のエスカレーションの威嚇を行うことで阻止しようとしてきた。短距離ミサイル、戦車、F-16戦闘機、長距離ミサイル、それらの供与が討議される度に、ロシアからの脅しが行われた。 米国、英国、フランスが供与した長距離ミサイルをウクライナがロシア領内の目標に対して使用することに米国が許可を与えた72時間後、ロシアはこれまでにない形でウクライナを攻撃した。ウクライナが「核搭載可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)」と呼ぶものが戦闘で初めて使用された。 11月21日の早暁、ロシア軍はウクライナのドニプロを新型のミサイルで攻撃した。プーチン大統領はそれを「開発を行っていたオレシュニク」と述べ、ウクライナ当局はRS26ルベジであり、ロシアの別のタイプのICBMよりも射程が短いものであると述べた。 これは10年の新START(戦略兵器削減条約)上は、ICBMの定義(注:射程が5500キロメートル〈km〉以上)に該当するものであるが、専門家の中には、それに疑問を呈する向きもあり、更に混乱に拍車をかけることに、プーチン大統領はオレシュニクを中距離射程のミサイルと呼んでいる。これをどう分類するかはともかく、この攻撃にはメッセージが含まれている。 この攻撃は、エスカレーション支配を示すための入念で段階的な試みのように見える。つまり、究極的には核戦争にまで至る報復の階梯で西側よりも優位に立つ能力を示そうとするものである。ロシアは22年以来、言葉での威嚇を繰り返してきたものの、西側諸国によるウクライナ支援を阻止するための行動を見いだすことができずにいた。 興味深いのは、今回のロシアによる攻撃の前日、キーウの米国大使館が一時的に閉鎖されたことである。同大使館は、ロシア側から「ミサイル発射の少し前に核リスク低減のためのチャネルを通じて」通報があったことをミサイル攻撃の後に明らかにした。このようなエスカレーションが起こっている最中でも、ロシアは安全上の手続きに従っているようである。