左折前の“幅寄せ”で安全性がアップ!|長山先生の「危険予知」よもやま話 第28回(前編)
急な左折は、合図を忘れて事故原因に!
長山先生:すでにミラーの死角部分に二輪車などがいた場合、二輪車を先に行かせてから幅寄せします。もし、幅寄せした状態でそこをすり抜けてくる二輪車や自転車がいた場合も同じで、先に行かせてから左折します。 編集部:ということは、事前に幅寄せする際に1回、曲がる際にもう1回、死角を2回目視する必要がありますね。 長山先生:そうですね。とくに二輪車の速度が速かったり、事前に左側端に十分幅寄せていなかった場合、目視を十分行う必要があるでしょう。二輪車は速い速度で走行していることが多く、チラッとミラーを見ただけでは見落とす危険性がありますから。また、左折事故を分析すると、交差点の直近で曲がることに気づいて急に左折を開始したり、突然経路を変えようと思って、合図もなしで急に左折したことが原因で起きているケースが少なくありません。 編集部:私も経験したことがあります。以前、渋滞で停止中の車列の右側(中央線付近)をバイクで通過していたところ、突然車が右側の路地に曲がろうと出てきたため、危うく接触しそうになりました。渋滞を回避しようと、急に進路を変えたようです。 長山先生:慌てて曲がろうとしたり、急に思いついて行動に移すと、いつも行っている安全確認を忘れがちで、とても危険です。そのような状況になったら事故の危険性を考えて、一呼吸おいて慎重に行動するか、状況によっては無理に行動に移さないことが大切です。 編集部:急に曲がろうとすれば、ウインカーを忘れたり、出すのが遅れますね。 長山先生:そのとおりで、合図が遅れれば、そのぶん周囲の車両にも左折する意思が伝わらず、運転者のミスがそのまま事故に直結してしまいます。なお、合図は交差点や駐車場の入口など、左折しようとする地点から30m手前に達したときに開始し、左折行為が終わるまで合図を継続して出さなければいけません。 編集部:左側端に寄せるのも厳密には進路変更になるので、30mのさらに手前から左にウインカーを出さなければいけませんよね? 長山先生:そうです。合図を行う時期は道路交通法施行令第21条で、下記のように規定されています(一部抜粋)。 【合図を行う時期】 ・左折するとき。: その行為をしようとする地点(交差点においてその行為をする場合にあっては、当該交差点の手前の側端)から30メートル手前の地点に達したとき。 ・同一方向に進行しながら進路を左方に変えるとき。: その行為をしようとする時の3秒前のとき。 編集部:進路変更は下欄に当たるので、3秒前になりますね。最短だと、ウインカーを3秒出してから幅寄せし、そのまま30mウインカーを出し続けて交差点を左折する計算ですね。かなり手前から準備していないと、とてもこのとおりできませんね。 長山先生:周囲の車に進路変更や左折の意思を確実に伝えて安全に左折するには、これだけの手順が必要であるということです。だから、目的地に行くため、どの交差点で左折するのか決まっている場合、その交差点のかなり手前で「あの交差点で左折だ」と意識しておくことが必要になります。 編集部:ところで、私はバイクに乗るのですり抜けしたくなるライダーの気持ちがよく分るのですが、今回のような交差点手前でのすり抜けは、バイク側にも問題がありますよね?